研究実績の概要 |
E4BP4は、概日リズムに関連する転写因子であり、炎症を制御することが報告されている。そこでE4BP4が、血管損傷後の新生内膜形成にどのように関与しているかを検討した。E4BP4欠損マウス(E4BP4-/-)および野生型マウス(WT)を用いて、大腿動脈カフ傷害より2週間後の新生内膜形成を観察し、内膜と中膜の面積を測定した。E4BP4-/-マウスとWTマウスの両方ともに、対側のコントロール大腿動脈には新生内膜形成は観察されず、血管壁にも構造的な違いは見られなかったことから、E4BP4-/-マウスでは8~12週齢まで血管の成長は正常であることが示唆された。E4BP4-/-マウスの平均内膜面積および内膜/中膜比は、WTマウスと比較して86%(WTマウス:3,683±512μm2[n=10] vs. E4BP4-/-マウス:521±363μm2[n=10];P<0.0001)および97%(WTマウス:0.33±0.05 vs. E4BP4-/-マウス:0.01±0.03;P<0.0001)減少した。免疫組織学的検討では、傷害14日目のE4BP4-/-マウスの外膜におけるNKp46陽性領域の割合は、WTマウスと比較して有意に低かった(P<0.05)。さらに、E4BP4-/-マウスの内膜におけるIL-6(P<0.05)、TNF-α(P<0.05)、IFN-γ(P<0.05)の陽性面積は、WTマウスよりも有意に小さかった。これらの所見は、E4BP4が血管傷害後の血管炎症を誘導する可能性を示している。 結論として、E4BP4の欠損は炎症性サイトカインを減少させ、傷害後の新生内膜形成を抑制することが示された。さらに、NK細胞の発達はE4BP4欠損によって障害されることも示唆された。以上より、E4BP4の阻害が血管の炎症を抑制する有用な戦略である可能性を示すことができたと考えている。
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