研究課題/領域番号 |
20K08540
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
黄瀬 大輔 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (50572418)
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研究分担者 |
中野 恭幸 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00362377)
小川 恵美子 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (00378671)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患 / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
慢性閉塞肺疾患(COPD)では、痩せがしばしば認められる。痩せのある患者では、入院頻度が増加し、予後が不良であることが知られている。一般的に、痩せはエネルギー吸収量と比べて消費量が多いことにより起こる。COPD患者では一日の総消費カロリーは健常者と比較して低い一方、食欲は低下していないとされる。COPD患者では肺機能が低下することで、ある一定の活動に対してエネルギー消費が増加しているとされる。 これまで、COPD患者の体重減少について、経年的な検討があまり行われていなかった。そこで、我々はCOPD患者において、体重減少、筋肉量減少がどのような要因によって予測できるかを検討した。その結果、CT画像を用いて計測する気道病変がより重症であると、その後の体重減少が大きいことが分かった。本検討について、第62回日本呼吸器学会学術講演会において発表を行った。 COPD患者の痩せの一因として、食物摂取後の消化・吸収の段階で障害されており、エネルギー吸収量が低下している可能性もある。ある種の腸管細菌は、食物繊維を短鎖脂肪酸に分解する。食物繊維は腸管から吸収できないが、短鎖脂肪酸は腸管から吸収できる。このため、腸内細菌叢の変化が体重の増減に関与すると考えられている。我々は、COPD患者において腸管細菌叢が変化しており、同じような食物摂取量であっても、吸収できるエネルギーが減少しているのではないかと仮説を立てた。このエネルギー吸収量の低下が、COPD患者の体重減少を引き起こしている可能性がある。また、COPD患者では栄養素の貯蔵が低下した状態であり、運動中の筋肉への栄養素の供給も障害されている。この状況で、腸管からのエネルギー供給低下が、さらなる運動能力低下をもたらしている可能性がある。 我々は前年度までに引き続き、COPD患者における腸内細菌叢と栄養状態についての関連の検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19流行により、予定していたCOPD患者における運動耐容能測定は行っていない。 このため、これまでに収集したCT画像、血液サンプルを用いて、別の視点から体重減少についての検討を進めている。 上述のように我々はCOPD患者において、体重減少、筋肉量減少がどのような要因によって予測できるかを検討するため、CT画像において、筋肉量、脂肪量を測定した。その結果、CT画像を用いて計測する気道病変がより重症であると、その後の体重減少が大きいことが分かった。また、筋肉量減少には肺機能検査で測定する気流制限が影響を与えることが分かった。本検討について、第62回日本呼吸器学会学術講演会において発表を行った。 腸内細菌叢については評価が完了しており、現在COPD患者の血清マーカーの測定について進めている。また、CT画像を用いて、筋肉量、脂肪量を測定を継続して行っている。今後、腸内細菌叢と体重、筋肉量、脂肪量、血清マーカーとの関連を検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上述のようにCOVID-19流行により、予定していた測定が進められないため、研究推進方策の修正を行い、これまでに収集したCT画像、血液サンプルを用いて、別の視点から体重減少についての検討を進めている。 COPD患者における体重減少、筋肉量減少について影響を与える因子の検討がこれまで十分に行われていなかった。このため、我々がこれまでに集積したCT画像や肺機能検査の結果を用いて、経年的な体重の変化、筋肉量の変化に影響を与える因子についての検討を追加することとした。上述のように、一部の結果についてはすでに学会での報告を行った。 腸内細菌叢については評価が完了している。現在、すでに取集したCOPD患者の血清を用いて、血清マーカーの測定について進めている。また、これまでに収集したCT画像において、筋肉量、脂肪量を測定を継続して行っている。今後、腸内細菌叢と体重、筋肉量、脂肪量、血清マーカーとの関連を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度においては、血清での蛋白測定を行う予定であり、翌年度分として請求した助成金と合わせてその費用に充てる予定である。
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