研究課題/領域番号 |
20K08553
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
寺崎 泰弘 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50332870)
|
研究分担者 |
寺崎 美佳 日本医科大学, 医学部, 講師 (50372785)
遠田 悦子 日本医科大学, 医学部, 助教 (00589327)
康 徳東 昭和大学, 医学部, 助教 (00571952)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | リンパ球増殖性肺病変 / IgG4 関連疾患 / 多中心性キャッスルマン病 / IgG4 陽性間質性肺炎(症候群) |
研究実績の概要 |
リンパ球増殖性肺病変の代表である、IgG4 関連疾患は臓器の腫大を特徴とし、高 IgG4 血症および組織中の IgG4 陽性細胞浸潤と線維化を認める疾患である。一方で呼吸器単独病変で血清 IgG4 高値、組織に IgG4 陽性細胞浸潤を伴う間質性肺炎の場合、鑑別に苦慮する。血清 IgG4 高値で、IgG4 陽性細胞浸潤を認めたびまん性肺病変の症例を全国から募り 17 施設より 29 例を集め解析した。臨床・画像・病理学的な検討( MDD )を行い、多中心性キャッスルマン病など鑑別疾患を除外して残った16 例を IgG4 陽性間質性肺炎(症候群)と診断した。診断時の年齢中央値は 66 歳、男性が 12 例であった。喫煙者は 13 例、呼吸器症状を有する症例は 13 例であった。画像検査・病理学的所見は多彩で、閉塞性血管炎を呈した症例は認めなかった。15 例がステロイドによる治療を受けた。全例のすりガラス影は改善したが、 6 例で網状影の増悪を認めた。 9 例では、網状影・嚢胞性病変の残存を認めた。2 例が慢性呼吸不全、 1 例が急性増悪のため死亡した。 IgG4 陽性間質性肺炎(症候群)は、ステロイド反応性が良好な IgG4 関連疾患とは異なる対応が必要であると考えられた。上記結果をERJ Open Res 2021; 7: 00317, 2021.に 報告掲載した。 さらに IgG4 陽性間質性肺炎(症候群)を、IgG4関連呼吸器疾患(IgG4-RRD)として扱うのが適切かを検討した。IgG4 陽性間質性肺炎の多くがACR/EULAR 分類基準では特異抗体およびステロイド反応性不良のため除外された。 IgG4 関連呼吸器疾患診断基準においてもステロイド反応性について記載することを検討すべきである。IgG4 陽性間質性肺炎のすりガラス影はステロイドに対する反応性良好だが、一方で網状影・嚢胞性病変は残存・増悪し、急性増悪例や死亡例も認められる。IgG4 陽性間質性肺炎は、予後良好な IgG4 関連疾患と区別して管理する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Crystal storing histiosytosis(CSH)例とCrystalglobulinemia syndrome(CGS)例などクリスタル関連のリンパ球増殖性病変のペプチド解析は、いくらか進められた。しかし、IgG4やMulticentric Castleman's disease関連の肺病変などについては、過去の病理バーチャルデータなどで臨床病理学的な解析など進めて論文報告もし研究を継続しているが、コロナ禍の影響により、病理未染スライドの新しいサンプルの確保が困難で、病変のスライドからのペプチド解析は予定の症例の解析があまり進んでいない。 COVID-19の対応により解析実行者の時間確保が難しくなるとともに、解析機械のメンテナンスも滞るなど解析環境に支障が生じ研究進行に遅れが生じている。 その他、有害事象発生はなく、倫理指針を遵守し研究を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響はあるが、IgG4やMulticentric Castleman's disease関連の肺病変などは、病理未染スライドサンプルの確保を進め、届いた症例から、速やかにレーザーマイクロダイセクションでサンプリングを行いLCMS/MS解析を行う。 ラット肺移植モデルは、拒絶反応よりリンパ球が多数集蔟して線維化を来す病変であり、この病理サンプルの確保が出来るため、動物検体についても検討を進めてみる。 コロナ禍の影響もあり、当施設のLCMS/MS解析機械のメンテナンスや解析が滞る場合は、共同研究者である昭和大学の康 徳東に依頼し、昭和大学のLCMS/MS解析の機械も使って検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費用などが予定より少なく済んだので、次年度の消耗品などに回す予定である。
|