研究課題/領域番号 |
20K08559
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
邵 力 山形大学, 大学院医学系研究科, 助教 (80344787)
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研究分担者 |
鈴木 潤 山形大学, 医学部, 助教 (70533925)
張 旭紅 山形大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10292442)
濱田 顕 近畿大学, 大学病院, 助教 (80772954)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 長鎖非コードRNA / 肺癌 / CTOS作製 / オルガノイド |
研究実績の概要 |
肺癌の進展における長鎖非コードRNA(long noncoding RNA,lncRNA)の果たす役割は明らかにされつつあるが、その成果を臨床応用するための橋渡し研究はまだ少ない。本研究は、我々が新規に同定した癌遺伝子型lncRNA S180122に着目して、薬剤耐性を獲得した肺腺癌患者由来の癌細胞塊を用いた培養法(cancer tissue-originated spheroid、CTOS法)により、lncRNAを標的とした核酸医薬の探索とバイオマーカーへの展開を目的とする。そのため、1)EGFR-TKIに耐性を獲得した肺腺癌患者の血液を用いて、S180122のバイオマーカーとしての可能性を明らかにすること、2)細胞株及び耐性を獲得した患者腫瘍組織に由来するスフェロイドを用いた薬剤応答の解析を通じて、S180122を標的としたlncRNA阻害剤の肺腺癌再発の抑制効果を評価することを計画した。 本年度では、患者から採取した肺癌組織のCTOSの調製方法を検討し、3D培養条件を最適化して培養皿の上で肺癌オルガノイドの樹立に成功した。中短期間に(2-3ヶ月)培養されたオルガノイドに、患者体内の腫瘍と類似した遺伝子発現パターンがあることを確認した。この結果によって、今後、患者肺癌組織に由来するオルガノイドを用いた薬剤応答の解析が可能になった。また、肺腺癌細胞株を用いてS180122を標的としたlncRNA阻害剤を検討したところ、2D培養細胞により最適阻害剤の選定に成功したが、阻害剤の3Dスフェロイドへのデリバリー効率の改善が本研究の次なる進展の鍵となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度では、計画通り肺癌患者由来のCTOSの調製培養やlncRNA阻害剤の選定などを実現した。一方、コロナの影響で手術を受けた肺癌患者からの血液や組織の採取数が予定より少なく、特に、現在初回治療として第3世代のオシメルチニブが広く選択されているため、EGFR-TKIに耐性を獲得した肺腺癌患者のリクルートが難しくなり、検体数が不足した。従って、計画全体の進展はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1) 検体数を増やすために、大学病院腫瘍内科と連携し、できる限り多くの薬剤耐性を獲得した肺腺癌患者の協力を得る。各々の患者の薬剤耐性獲得前後血漿中のS180122発現量を比較し、そのlncRNAが体液診断用バイオマーカーとなる可能性を検討する。 2) 患者検体からのCTOSを樹立・維持しながら、より少量の組織で短期間に薬剤応答の解析を利用できるようなCTOSの培養技術を確立する。さらに、EGFRの2次的遺伝子変異 (T790M)を持つ肺腺癌細胞株を用いてスフェロイド培養系を構築し、薬剤感受性を解析できる細胞株に由来する3D培養基盤も樹立する。 3) 早急にlncRNA阻害剤のCTOSへのデリバリー条件を最適化する。具体的には、si3D-Fect(OZ Biosciences社)やAteloGen(高研社)など多様なトランスフェクション試薬を用いて、IncRNA阻害剤の効率的なデリバリー方法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に必要な助成金の内訳は、検体中のlncRNAの測定や検体によるCTOS作製のための試薬(酵素、培地、サイトカインなど)が大半を占めている。本年度はコロナの影響により、患者からの検体採取数が予定より少なかったため、一定額の次年度使用額が生じた。 令和3年度は検体数を増やし、lncRNA測定やCTOS作製を続け、更にそれらのCTOSを用いたS180122を標的としたlncRNA阻害剤の肺腺癌再発の抑制効果を検討する予定であり、次年度使用額を有効に利用できる見込である。
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