IgG4関連疾患の画像診断・治療評価法および新規バイオマーカーと予後因子の探索

2022 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 20K08594
• 研究機関: 高知大学
• 研究代表者: 谷口 義典 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (70584431)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: IgG4関連疾患 / コリンエステラーゼ / 線維化 / 臓器病変数 / 腫瘍化 / 血管炎 / シェーグレン症候群 / サイトカイン

研究実績の概要

血清コリンエステラーゼ(ChE)活性低下を来すIgG4関連疾患（IgG4RD）の症例をしばしば経験する。IgG4RDにおける血清ChE活性の意義についての研究結果を以前にRheumatology Advances and Practive誌に投稿し、掲載され、現在も症例数を増やし検討継続中である。研究方法としては、IgG4RD 70例を対照群（健常対照、血管炎（AAV群）、シェーグレン症候群（SjS群））と比較し、臨床症候・所見、臓器病変数、各種血清学的検査、各種サイトカインなどを後方視的に解析した。研究の結果として、まずは、IgG4RD 60例のうち、低ChE活性を呈した34例の血清ChE活性(130.5±40.2U/L)は、36例のChE正常群(316.2±60.5 U/L)や健常対照群、AAV群、SjS群と比較して有意に低かった。またIgG4RD患者において、低ChE活性群における臓器病変数(5.3±1.1)は、正常ChE活性群(1.7±1.2)よりも有意に多かった。低ChE活性群では治療開始後ChE活性の改善を認め、疾患活動性と合致した。多臓器病変を有するIgG4RDにおけるChE値は、各種サイトカイン値や血清学的炎症反応の値などの影響を受けず低値であったのに対し、AAV群のChE値は、各種サイトカイン値や血清学的炎症反応の値などの影響を有意に受けた。さらにIgG4RDのChEは、線維化マーカーDKK-1やTGF-βとの有意な相関を認めた。本年度の結論として、IgG4RDにおいて、血清ChE活性は病変広がりおよび活動性の指標として、さらにN数を増やすことで有用性が高まった可能性がある。
IgG4関連疾患の腫瘍化の検討において、悪性腫瘍の既往または疾患発症後の悪性腫瘍の発症の頻度が有意に高く、悪性腫瘍発生に関与する因子を同定中であり、さらに集積し、解析予定である。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年度までのCOVID-19蔓延の影響もあり、診療への従事時間も増え、また、患者さんの受診頻度も減少したことで、検体採取の機会が減ったことも影響し、少々の遅れが生じている。

今後の研究の推進方策

COVID-19が収束に向かっており、またCOVID-19への対策もできており、患者さんの受診も戻ってきているため、検体採取を小まめに行い、研究のスピードを上げていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

試薬の購入、外注検査依頼などを行ったが、試薬購入の一部や解析ソフト購入などが今年度申請に間に合わず、次年度使用額が生じた。次年度早々に購入申請予定としている。

研究成果

• [雑誌論文] Comparison of clinicopathological features between patients with and without hypocomplementemia in IgG4-related kidney disease (2023)
  • 著者名/発表者名: Saeki T, Nagasawa T, Ubara Y, Taniguchi Y, Yanagita M, Nishi S, Nagata M, Yamaguchi Y, Saito T, Nakashima H, Kawano M
  • 雑誌名: Nephrology Dialysis Transplantation 巻: 38 ページ: 1053-1056
  • DOI: 10.1093/ndt/gfac317
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Clinical Images: Nivolumab-induced tracheobronchial chondritis in a patient with hypopharyngeal cancer (2023)
  • 著者名/発表者名: Hamada-Ode K, Taniguchi Y, Osaki M, Yoshimatsu R, Nitta N
  • 雑誌名: Arthritis and Rheumatology 巻: 75 ページ: 121
  • DOI: 10.1002/art.42317
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] A multicentre study of clinical features and HLA typing in Japanese patients with ankylosing spondylitis (2023)
  • 著者名/発表者名: Tada K, Dobashi H, Taniguchi Y, Shuto T, Hagimori K, Hayashi E, Inoue H, Kobayashi S, Ymaji K, Tamura N
  • 雑誌名: Modern Rheumatology 巻: 33 ページ: 392-397
  • DOI: 10.1093/mr/roac008
  • 査読あり
• [雑誌論文] Clinical characteristics of patients with spondyloarthritis and inflammatory bowel disease versus inflammatory bowel disease-related arthritis (2022)
  • 著者名/発表者名: Ono K, Kishimoto M, Deshpande GA, Fukui S, Kawaai S, Sawada H, Matsuura M, Rodriguez VR, Proft F, Tada K, Tamura N, Taniguchi Y, Hirata A, Kameda H, Tsuji S, Kaneko Y, Dobashi H, Okano T, Haji Y, Morita A, Okada M, Komagata Y, Medina CL, Molto A, Dougados M, Hisamatsu T, Tomita T, Kaname S
  • 雑誌名: Rheumatology International 巻: 42 ページ: 1751-1766
  • DOI: 10.1007/s00296-022-05117-0
  • 査読あり
• [学会発表] 日本腎臓学会IgG4関連腎臓病ワーキンググループ(WG)：低補体血症の有無によるIgG4関連腎臓病の臨床、病理学的差異 (2022)
  • 著者名/発表者名: 佐伯敬子、長澤将、乳原善文、谷口義典、柳田素子、西慎一、長田道夫、山口裕、斉藤喬雄、中島衡、川野充弘
  • 学会等名: 日本腎臓学会総会・学術集会