研究課題/領域番号 |
20K08619
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
清水 章 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (00256942)
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研究分担者 |
石井 永一 日本医科大学, 大学院医学研究科, 研究生 (00193243)
桑原 尚美 日本医科大学, 医学部, テクニカルスタッフ (00599011)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | LC-MS/MS法 / プロテオミクス / 質量分析 / 腎生検病理検体 / レーザーマイクロダイセクション / 腎沈着症 / 免疫複合体型糸球体腎炎 |
研究実績の概要 |
本研究は、免疫複合体型糸球体腎炎の原因抗原の同定と腎沈着症の沈着物の沈着機序の解明をすることを目的に、高感度の液体グロマトグラフィ/タンデム質量分析法(LC-MS/MS法)を用いて、腎臓内に存在する微量蛋白質を解析している。本年度は、昨年度に引き続き、一次性および二次性膜性腎症症例の腎生検検体を用いLC-MS/MS法で解析を行い、PLA2Rに加え、THSD7A, NELL-1, EXT1/EXT2, NCAM1, Sema3B, protocadherin 7 (PCDH7)などのすでに知られている抗原の出現頻度と原因疾患との関連について検討を進め、免疫染色を用いてLC-MS/MS解析結果の検証を行っている。膜性腎症の新規抗原についても検索している。免疫複合体型糸球体腎炎の抗原の解析についても腎生検検体を用いて LC-MS/MS法を用いて解析を始めている。また、質量分析が必要、もしくは確定診断への検討として有用な症例についての検討を引き続き進めた。電顕所見により糸球体に特異な fibrillary構造を呈するelectron dense depositを有する症例に、腎生検検体からのLC-MS/MS法解析を行い DNAJB9を検出し、免疫染色により確認しFibrillary腎炎の確定診断をつけた症例の症例報告をした。腎糸球体にmicrotubular構造を呈する沈着物を認める Cryofibrinogen腎症の症例を、LC-MS/MS法解析により診断に導き症例報告を行い、血漿の4℃の冷却により得られた沈殿物の質量分析による特徴や、電顕による構造の特徴の確認を行っている。単クローン性免疫グロブリンの関連した単クローン性免疫グロブリン関連腎疾患の単クローン性免疫グロブリンの確認をLC-MS/MS法により行い、確定診断に導き、症例報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は 糸球体腎炎の原因抗原の同定と腎沈着症の沈着物の沈着機序の解明をすることを目的に、LC-MS/MS法を用いて腎臓内に存在する微量蛋白質を解析している。本年度は、一次性や二次性の膜性腎症の腎生検検体をLC-MS/MS法で解析を行い、PLA2Rに加え、THSD7A, NELL-1, EXT1/EXT2, NCAM1, Sema3B, PCDH7などのすでに知られている抗原の出現頻度と原因疾患との関連についての検討や、新規抗原の検索を進めた。LC-MS/MS法解析が確定診断に直結する疾患や診断に有用な糸球体疾患の検討を進めており、LC-MS/MS法解析がFibrillary腎炎、Cryofibrinogen腎症、単クローナル免疫グロブリン関連糸球体疾患の確定診断につながり、それらの症例報告を行っている。さらに特異蛋白質が関連していると考えられる希少な症例についても検討をすめている。また次年度に解析すべき、腫瘍関連膜性腎症を含むparaneoplastic glomerulopathyの症例、原因抗原が明らかではない免疫複合体型糸球体腎炎、IgA腎症、紫斑病性腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎 (MPGN)、ループス腎炎、感染関連糸球体腎炎、糸球体沈着症の次年度の解析すべき症例の抽出を終え、解析を進める段階にきている。これらを総合的に判断し、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
免疫複合体型糸球体腎炎の抗原を同定し、疾患の病態の解析や疾患のバイオマーカーの開発を積極的に進める。当施設における一次性や二次性の膜性腎症でのLC-MS/MS用いたPLA2R, THSD7A, NELL-1, EXT1/EXT2, NCAM1, Sema3B, protocadherin 7 (PCDH7)の出現頻度と原因疾患との関連をまとめる。また、二次性膜性腎症で、免疫染色で証明されている myeloperoxidase (MPO)、Contactin1 (CNTN1), lecithin-cholesterol acyltransferase (LCAT), HBeAgやHBsAgに対し LC-MS/MS法で同定可能かを検証する。腫瘍関連膜性腎症を含むparaneoplastic glomerulopathyの症例、原因抗原が明らかではない immune complex型糸球体疾患、IgA腎症、紫斑病性腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎 (MPGN)、ループス腎炎、感染関連糸球体腎炎症例と対象腎生検検体からの単離糸球体をLC-MS/MS法で微量蛋白質群を解析し抗原の同定を試みる。糸球体沈着症や間質尿細管沈着症の特異なorganized structureや crystalなどの構造を有する沈着物の組成の解析を進める。これらの研究成果をまとめ、報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用予定の研究費には、腎生検検体を用いて、レーザーマイクロダイセクションによる対象組織の抽出とLC-MS/MS法による質量分析のための消耗品や研究のための情報取集のための研究会や学会への参加費を含んでいる。今年度に予定していた国際学会の参加を取りやめた。また、免疫複合体型糸球体腎炎や糸球体沈着症の解析症例の抽出に時間がかり、十分には解析が進められていない。次年度は、免疫複合体型糸球体腎炎や腎沈着症の抽出と解析を積極的に進め、成果をまとめ報告する。
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