研究実績の概要 |
本研究は、免疫複合体型糸球体腎炎の原因抗原の同定と腎沈着症の沈着物の沈着様式の解明を目的に、高感度の液体グロマトグラフィ/タンデム質量分析法(LC-MS/MS法)を用いて、腎臓内に存在する微量蛋白質を解析している。本年度は、昨年度に引き続き、一次性および二次性膜性腎症症例の腎生検検体を用いLC-MS/MS法で解析を行い、PLA2R、THSD7A, NELL-1, EXT1/EXT2, NCAM1, Sema3B, protocadherin 7 (PCDH7)などのすでに知られている抗原の出現頻度について検討を進め、免疫染色を用いてLC-MS/MS解析結果との感度・特異度の検討を進めた。免疫複合体型糸球体腎炎の抗原の解析も進めている。また、質量分析が必要、もしくは確定診断への検討として有用な症例についての検討を引き続き進めた。LC-MS/MS分析と免疫染色によるDNAJB9の同定によりfibrillary腎炎と診断した17歳の症例、DNAJB9陰性の線維性構造を有する沈着物を伴うIgA優性糸球体腎炎の奇異な症例や膜性増殖性糸球体腎炎の症例、LC-MS/MS分析と蛍光抗体法で単クローン性免疫グロブリンを確認し、係蹄内皮細胞障害が強く、メサンギウム融解性の microaneurysmの形成を認める proliferative GN with monoclonal IgG3κ depositsの症例を報告した。また、免疫染色と LC-MS/MS分析を用いて、IgG の沈着を伴う微小変化型ネフローゼ症候群型のIgG腎症の病態には、古典的補体経路の活性化が関与している可能性を示した。感染関連糸球体腎炎では、糸球体にNAPlrの沈着を認め、NAPlrは溶連菌GAPDHと同一物質であることが知られているが、現在のところ、LC-MS/MSでの同定には至っていない。
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