研究課題
基盤研究(C)
ヒストンメチル化酵素MMSETはヒストンH3の36番目のリジンをジメチル化することで遺伝子の転写を活性化している。20%の多発性骨髄腫ではMMSETのタンパク質の量の増加が見られ、また一部のがんでは活性が異常亢進したアミノ酸変異体が見つかっている。本研究ではMMSETのクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析によってMMSETと基質ヌクレオソームとの複合体の立体構造を解析し、そのメチル化活性を制御する機構を明らかにした。
構造生物学
MMSETは本来基質が結合するクレフトに自己阻害ループがフタをするように結合することで基質との結合がある程度制限されている。一方、E1099KやT1150Aのようながん化型のアミノ酸変異体は、自己阻害ループのフタをする力が弱いため、高いメチル化活性を示すことが立体構造レベルで明らかとなった。この成果は、がん化型MMSETによる調節機構の破綻を回避し、適切な活性制限効果を取り戻すような分子標的薬を設計するための立体構造基盤を提供するものである。