研究課題
【研究の目的】これまで成人の小麦アレルギーの原因は小麦ω-5グリアジンであることを明らかにし、ω-5グリアジン遺伝子座を欠失した小麦系統を見出した。本研究では、この小麦系統の小麦摂取による免疫寛容の誘導の可能性に係る基礎的検討を行うことを目的とした。【研究の方法】ω-5グリアジン感作型小麦アレルギー患者を対象として、1BS-18ホクシンパンを継続摂取することにより減感作が達成できるかを検証する臨床研究を行った。具体的方法は、ステップ1では1BS-18 ホクシンパンを10gから連日摂取開始し、アレルギー症状が見られない場合1週毎に10gづつ増量して最大60まで摂取し、最大摂取量を決定する。ステップ2では最大摂取量を3ヶ月間継続摂取して、アレルギー症状の有無、患者末梢血好塩基球の活性化を検討した。【結果】 ω-5グリアジンに感作された成人小麦アレルギー患者16名を臨床研究に登録した。ステップ1では、16例のうち14例が1BS-18ホクシンパン60g摂取できた。2例は 50g摂取で蕁麻疹が出現し、最大摂取量は40gと判定した。ステップ2には60g摂取できた14例、40g摂取できた1例、合計15例を登録した。3ヶ月摂取を完了したの は14例で、1例は蕁麻疹が出現して中止した。ステップ2終了後に小麦抗原による好塩基球活性化試験では1例が著明に低下が見られたが、13例 では著明な低下は見られなかった。好塩基球活性化試験にて小麦抗原に対する反応が低下した1例と低下が見られなかった1例にて、リンパ球活性化の状態を解析する基礎的検討を行った。【結論】ω-5グリアジン感作型小麦アレルギー患者は、16例中14例が1BS-18ホクシンパンを60gまで摂取できた。3ヶ月継続摂取は15例中14例が達成した。好塩基球活性化の低下が1症例で見られた。この症例で、末梢血リンパ球の活性化の基礎的検討を行った。
4: 遅れている
20例を登録予定であったが、16例の登録に留まった。16例中ステップ1で15例が最大摂取量を決定し、ステップ2へ移行した。15例中14例がステップ2を完了した。14例中好塩基球活性化の低下が見られたのは1例、低下が見られなかったのは13例であり、減感作ができたと思われる症例が1例のみであったため、さらなる基礎的検討が遅れている。
減感作ができたと思われる症例が1例と減感作が成立していない症例数例で、さらなる基礎的検討を実施、結果を比較する。
減感作達成者数が予想より少なかったため、基礎的検討が遅れたため次年度使用額が生じた。検体を有効に活用するため次年度は急速冷凍庫を購入予定である。
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Am J Hum Genet.
巻: 108 ページ: 1540-1548.
10.1016/j.ajhg.2021.06.017.