研究課題
侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)は、本邦では希少感染症であるが故に髄膜炎菌の薬剤感受性成績は不足している。今年度はIMD患者由来髄膜炎菌における薬剤感受性成績を構築することを目的とした。国立感染症研究所で保存している全国から収集されたIMD患者由来87株(1998年~2018年分離株)の薬剤感受性試験を行った。抗菌薬はペニシリン、セフトリアキソン、シプロフロキサシン、メロペネム、アジスロマイシンを使用し、Eテスト法により最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。耐性ブレイクポイントの判定は米国臨床検査標準委員会CLSIの基準を使用した。全87株において、治療で使用されるペニシリンの耐性率は4.6%と低値を示したが、近年海外で増加している低感受性(中間)株も含めると47.1%が非感性株であり海外の報告と比して高い傾向が確認された。また、近年ペニシリナーゼ保有株も海外で報告されているが、今回は認められなかった。また、IMD発端者との濃厚接触者に対し予防内服に使用されるシプロフロキサシンやアジスロマイシンの非感性株は、それぞれ9.2%(耐性株は5.7%)および3.4%を占めた。一方、細菌性髄膜炎の経験的治療を含め臨床で使用頻度が高いセフトリアキソンやメロペネム、濃厚接触者の予防内服に使用されるリファンピシンでは、全株が感性を示し、これらの薬剤は未だIMDの治療や予防に有用性が高いと考えられた。加えて、上記抗菌薬の経年的変動をMIC幾何平均値で解析したところ、ペニシリンの数値が経年的に上昇傾向を示したため、この抗菌薬の耐性化が進んでいる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
既に薬剤感受性成績の解析を終了し、次年度に予定していたペニシリン耐性株の全ゲノム配列取得を開始できたため。
ペニシリン耐性株の全ゲノム配列取得を進める。その後、公共データベースに登録されている耐性株のゲノム配列とともに比較ゲノム解析を実施し、本邦のペニシリン耐性株の遺伝的特徴を明らかにする。
菌株同定や薬剤感受性試験に関わる消耗品や試薬の費用が当初の見込みよりも低く抑えられたため。次年度の計画に従い適切に使用する予定である。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Journal of Infection and Chemotherapy
巻: 27 ページ: 773~777
10.1016/j.jiac.2021.01.013
日本臨床微生物学会雑誌
巻: 31 ページ: 108~112
Japanese Journal of Infectious Diseases
巻: 74 ページ: 115~121
10.7883/yoken.JJID.2020.356
Frontiers in Microbiology
巻: 11 ページ: 587398
10.3389/fmicb.2020.587398
巻: 26 ページ: 802~806
10.1016/j.jiac.2020.03.007
巻: 26 ページ: 554~562
10.1016/j.jiac.2020.01.014
Access Microbiology
巻: 2 ページ: ー
10.1099/acmi.0.000134