研究課題
【背景】クッシング病は、ACTH産生下垂体腫瘍が原因の疾患である。クッシング病では高コルチゾール血症に関わらずACTHの持続的分泌が認められ、ネガティブ フィードバック(NF)機構の破綻が特徴であるが、そのメカニズムは不明である。 【方法と結果】ACTH産生下垂体腫瘍から抽出したRNAのうち、ACTHの前駆体であるPOMC遺伝子の発現が高い腫瘍3例と、低い腫瘍3例を選び、DNAマイクロアレイを 用いて両群での遺伝子発現プロファイルを比較したところ、POMC遺伝子の発現が高い腫瘍でコルチゾール代謝酵素に関わるCYP3A4遺伝子発現が有意に高いことが 判明した。このため50例の腫瘍RNAを用いて定量リアルタイムPCRを行い検証したところPOMC mRNAとCYP3A4 mRNA発現量に正の相関が認められた。CYP3A4モノク ローナル抗体を用いた免疫染色を68例のACTH産生下垂体腫瘍で検討したところ、約60%が発現陰性、弱陽性が約20%、陽性が約20%でありCYP3A4 mRNAとCYP3A4免疫 染色スコアに正の相関が認められた。またUSP8変異陽性のCushing病下垂体腺腫でCYP3A4発現が有意に高値であった。腫瘍の初代培養を用いた解析で生理濃度の コルチゾール(≧30 nM)や低濃度のデキサメタゾン(≧3 nM)で用量依存性にCYP3A4 mRNAと蛋白発現、CYP3A4の酵素活性の上昇が認められたことからグルココルチ コイド受容体GRを介した正の発現調節が考えられた。 【考察】ACTH産生下垂体腫瘍の約40%にCYP3A4の発現が認められた。高コルチゾール血症によりGRを介してCYP3A4発現が誘導されることでCYP3A4による腫瘍細胞 内コルチゾールの代謝が促進されることがクッシング病におけるNF機構の破綻の成因に関与する可能性が示唆された。
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The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻: 109 ページ: e983~e996
10.1210/clinem/dgad694