研究課題
全世界の糖尿病罹患者は2019年で4億6300万人と推計されている。インスリンを分泌する膵β細胞の障害は、糖尿病の原因となる。我々はこれまでに、糖尿病では膵β細胞が、その発生、分化、機能に重要な転写因子の発現低下により脱分化し、それが膵β細胞の機能障害の原因となる事を明らかにしてきた。また網羅的遺伝子発現解析などにより、成熟β細胞には特徴的な遺伝子発現パターンが存在し、発生段階や糖尿病の膵β細胞障害時には、そのパターンが変動することを明らかにしてきた。そこで本研究では、成熟膵β細胞に特徴的な遺伝子発現制御メカニズムを解明し、細胞あるいは個体レベルで、それらメカニズムの破綻が膵β細胞機能に与える影響を明らかにして、糖尿病の病態メカニズムを解明する。本年度は、成熟膵β細胞に特徴的な遺伝子発現制御メカニズムとその生理的重要性、ならびにその破綻と膵β細胞障害との関連を明らかにするため、成熟膵β細胞とそれ以外の膵島細胞、4週齢と8週齢のマウス膵島、糖尿病モデルマウスdb/dbと対照のdb/mの膵島における遺伝子発現を網羅的に解析し、成熟膵β細胞で有意に発現が抑制、あるいは増強している遺伝子群を同定した。次にそれら遺伝子について、4週齢と8週齢のマウス膵島、糖尿病と対照マウスの膵島や、膵臓と各臓器における蛋白発現を、免疫組織化学法により解析した。さらにマウス単離膵島を用いて、これら遺伝子の発現を増強あるいは減弱させるための予備実験を施行した。これら成果を2021年度に活かして、標的遺伝子の膵β細胞における発現変動の影響を解析する予定である。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症の影響で研究活動が制限され、実験が計画通りに進まなかったため。
本年度同定した、成熟膵β細胞で有意に発現が抑制あるいは増強していると示唆される遺伝子群について、成熟膵島ならびに成熟膵β細胞における蛋白ならびにRNA発現と、それらの発現制御領域におけるDNAメチル化の状態を明らかにする。また、成熟膵β細胞において標的遺伝子の発現を増強あるいは減弱させ、その生理的あるいは病理的な影響を解析することにより、成熟膵β細胞に特徴的な遺伝子発現制御メカニズムとその意義を解明する。さらに、特定の分子(群)について、その発現変動が膵β細胞機能に与える影響を個体レベルで解析して、糖代謝制御における標的遺伝子の機能を解明する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)
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