研究課題/領域番号 |
20K09039
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
平下 禎二郎 大分大学, 医学部, 病院特任助教 (10527758)
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研究分担者 |
猪股 雅史 大分大学, 医学部, 教授 (60315330)
岩下 幸雄 大分大学, 医学部, 客員研究員 (60534203)
平下 有香 大分大学, 医学部, 医員 (70771955)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膵管内乳頭粘液性腫瘍 / 糖代謝 / PET/CT / mTORC1 |
研究実績の概要 |
膵管内乳頭粘液性腫瘍 (Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm:以下IPMN)においては手術時期決定のための「悪性化のバイオマーカーの同定」と進行癌となった場合の「有効な治療法の確立」が重要であり、本研究ではIPMNの癌化に伴う代謝変化の解明により、IPMNにおける①癌化バイオマーカーの同定による悪性化診断(腺腫・腺癌の適切な鑑別)法の確立、②癌の進行・浸潤に関わる因子の検討による新規治療標的の同定である。 【IPMNの悪性化のバイオマーカーの同定】 IPMNにおける代謝の変化の解明: IPMNの癌化はPET/CTでのSUV-maxのカットオフ値を3.5とすることで、感度82%、特異度96%で良悪性の鑑別に有用な検査であった。免疫染色でGLUT1の発現を正常膵細胞、腺腫、腺癌で比較すると、有意に腺癌での発現が高く、腺腫から腺癌への発癌に伴い糖代謝の変化が起きていると考えられた。IPMN発癌過程におけるmTORC1活性化メカニズムの解明:mTORC1活性化を示すpS6の免疫染色で、腺癌での発現が腺腫よりも有意に高く、さらにpS6の発現はGLUT1の発現と関連していた。これはmTORC1活性化が糖代謝の経路と関連があることを示唆している。 【mTORC1活性に伴う浸潤メカニズムの解明と治療標的の同定】 IPMNの浸潤におけるmTORC1活性上昇の意義の解明:細胞実験でmTORC1活性の抑制が細胞増殖を抑制した。また、臨床データの解析でpS6やGLUT1は予後との相関はなく、発癌の段階での影響が最も強いものと考えられた。IPMNオルガノイドを用いた、新たな治療標的の同定:IPMNオルガノイドの樹立を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で、pS6やGLUT1がIPMNの癌化に大きく関わっていることが示され、また、PET/CTが癌化の診断に有用であることを示し、すでに論文化しており、おおむね当初の研究計画に沿って順調に進行している。IPMNのオルガノイド樹立に関しては更なる成功率の向上が必要であり、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画にそって、IPMNにおけるmTORC1活性化と糖代謝の関係についての研究を行い、論文や口演による発表を行った。オルガノイドの樹立をさらにすすめ、これを用いて、新たな治療標的としてmTORC1の阻害剤(PF-4691502)などのmTOR pathwayに関する因子の抑制による増殖抑制効果について検討する。mTORC1が抗がん剤耐性に関与する可能性も考え、すでに癌化したIPMNに対して使用されているTS-1やGemcitabineとの併用なども行うことで、具体的な治療法の確立を目指す。
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