研究課題/領域番号 |
20K09137
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
古荘 文 久留米大学, 医学部, 助教 (80597427)
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研究分担者 |
青木 浩樹 久留米大学, 付置研究所, 教授 (60322244)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大動脈解離 / 免疫グロブリン |
研究実績の概要 |
本研究では申請者独自の知見に基づき、解離病態における免疫グロブリンの役割を明らかにし、解離病態の全貌を解明することを目的とした。 コラーゲン架橋酵素阻害薬BAPNとアンジオテンシンIIの同時投与(BAPN+AngII)で1週間で発症しはじめ2週間でほぼ全数が解離を発症する大動脈解離モデルを用いた。野生型マウスの正常大動脈の免疫染色では免疫グロブリンは外膜にわずかに認めるのみであったが、解離刺激後は解離発症に先立って大動脈の中膜に局所的な免疫グロブリンの沈着を認めた。内因性免疫グロブリンを持たないB細胞欠損マウス(mMTマウス)では解離発症が抑制された。さらに、mMTマウスに外因性免疫グロブリンを投与すると解離増悪を認めた。 トランスクリプトーム解析を行ったところ、mMTマウスへの外因性免疫グロブリン投与により炎症関連遺伝子群の発症亢進と脂質代謝の抑制を認めた。脂肪組織由来の組織保護因子アディポネクチンの血清濃度は、野生型マウスおよびmMTでは解離刺激による変化しなかったが、mMTに外因性免疫グロブリンを投与すると解離刺激により血清アディポネクチンは低下した。この結果から、解離病態に脂肪組織の反応が関与する可能性が示唆された。 解離病態に対する脂肪組織の関与を検討するために、野生型マウスに解離刺激を加える前後で傍大動脈脂肪組織を採取し、トランスクリプトーム解析をおこなった。解離刺激により傍大動脈脂肪組織では免疫応答関連遺伝子、免疫グロブリン関連遺伝子、細胞増殖関連遺伝子、細胞外マトリックス関連遺伝子の発現増加を認めた。また、脂質関連代謝遺伝子群の発現抑制を認めた。これらの変化は解離発症に先立って起こっていることから、解離発症の結果ではないと考えられた。大動脈組織の遺伝子発現変化と共通部分が多く、大動脈および傍大動脈脂肪組織が1つのシステムとして大動脈解離病態を形成していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りmMTにおける外因性免疫グロブリンの効果を検証し、解離の増悪、組織保護因子の低下、組織障害因子の増加を引き起こすことを明らかにした。また、大動脈及び傍大動脈脂肪組織が一体となって解離刺激に応答しているという新しい知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は大動脈組織において組織障害因子と組織保護因子の動態を明らかにする。脂肪組織の応答とB細胞および免疫グロブリンの関連を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用する試薬の節約ができたためと考える。次年度以降はノックアウトマウスの作成費、マウス購入費および飼育費、生化学的解析費および組織学的解析費に予算をあてる予定である。
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