研究課題/領域番号 |
20K09179
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
佐野 由文 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (60322228)
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研究分担者 |
坂上 倫久 愛媛大学, 医学系研究科, 講師(特定教員) (20709266)
岡崎 幹生 岡山大学, 大学病院, 講師 (50467750)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肺癌細胞 / 免疫チェックポイント阻害剤 / PD-L1 / NEDD8 |
研究実績の概要 |
Programmed death-ligand 1 (PD-L1)は、ある種の肺癌細胞に高発現しており、T細胞が発現するPD-1との結合を介して癌細胞に対する免疫活性を抑制することが知られている。最近、PD-1/PD-L1結合阻害抗体の登場により、T細胞の再活性化を促し、癌進展抑制効果をもたらすことが明らかになってきた。しかし、癌細胞はどのような分子メカニズムでPD-L1の発現量を制御しているのだろうか?我々はこの科学的疑問に答える目的で、最近見出したNEDD8依存的タンパク質翻訳経路に着目し、転写制御の側面からNEDD8依存的なPD-L1発現制御機能の解明研究を進めてきた。まず初めに、PD-L1のプロモーター領域にluciferaseを結合させたコンストラクトを用いて、プロモーター領域に結合するタンパク質群と、NEDD8修飾阻害剤を添加した時のプロモーター結合タンパク質の比較解析を試みたが、再現性の高いデータを取得することは困難であった。この理由として、細胞外に取り出すことで形成された複合体形成が細胞内と異なる構造を取ったためと考えられたため、細胞内で表現型を観察できるsiRNAライブラリーを用いたスクリーニング法に切り替えた。NEDD8化修飾阻害剤を処理した肺癌細胞株を用いて網羅的遺伝子発現解析を実施し、得られた発現変動遺伝子セットからシグナルパスウェイ解析によりPD-L1の発現を制御する可能性の高い特定のファミリータンパク質に絞り込んだ。その中から複数の遺伝子に対するsiRNAについては、NEDD8化阻害剤によって発現変化したPD-L1を完全にレスキューすることに成功した。現在同定した遺伝子群に対して詳細な解析を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初に計画した、PD-L1発現制御に関わるタンパク質の同定については達成できたが、直接結合するタンパク質の同定には至っておらず、少し時間を要していたため。
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今後の研究の推進方策 |
絞り込んだ候補遺伝子に対してNEDD8修飾-脱修飾との関係性について生化学および分子生物学的解析手法を用いて、引き続き明らかにしていく予定である。また、病理学的解析のための検体収集についても継続する予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
生化学的手法によるPD-L1プロモーター結合タンパク質の同定実験の条件検討に時間を要したと同時に、細胞生物学的実験手法を用いた検討を重ねているため、実験進行に僅かな遅れが生じているため。
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