研究実績の概要 |
令和3年度まで、第X因子阻害薬である、アピキサバン、エドキサバン、リバーロキサバンを対象とする検討を進めてきたが、測定系として直接トロンビン阻害薬への適用が可能かどうかを検討することとした。令和4年度は健常ボランティアより採血した検体に直接トロンビン阻害薬である、ダビガトランを加える形で人為検体を作成し、これに検討中のDOAC測定系を適用する形で、交流1MHz下で測定した誘電率の変化から求める凝固時間の変化について、検討した。 ダビガトランについては、10名のボランティア採血を行い、採血検体にダビガトランを加え0、50、100、200、400ng/mLの人為検体を作成し、凝固時間の相関性について検討をした。凝固時間はそれぞれ平均(標準偏差)で108(18), 265(69), 391(83), 457(98), 633(82)秒であった。ダビガトラン濃度との間で有意な相関があり、0ng/mLの凝固時間と、50ng/mL以上のいずれの検体も有意に凝固時間が延長していた。またダビガトラン800ng/mLとした全血人為検体に、0-100mcg/mLになるように、イダルシズマブを添加し、ダビガトランの残存濃度と凝固時間の関係を調べたところ、この二つのパラメーターの間には強い相関が認められた。ダビガトランの評価系としては、特に、50ng/mL付近の低濃度域での凝固時間の延長が著しく、薬効消失の判定において、有用性が発揮される可能性が示された。 以上の検討により、人為検体という制約はつくものの、本測定系によりDOAC全般の薬効評価が可能となることが示唆された。
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