研究実績の概要 |
重症患者では急性期に腸内細菌叢や腸内環境が大きく変化し、合併症や生命予後と関連することを我々は報告してきた。しかし、その背景にあるメカニズムについてはほとんど不明であり、その点の解明が有効な腸管内治療の開発の課題となっている。重症病態に陥った患者では急性期には強い全身性の炎症状態となり、亜急性期には逆に代償性の抗炎症状態になることが知られている。我々は入院から1週間で大きく腸内細菌叢が変化することを報告しており、免疫の変化と腸内細菌叢・腸内環境の変化には関連があると考えている。 本研究では、3日以上の人工呼吸管理を要したSIRSの診断基準を満たした症例に対して、入院から1~7日目、8~14日目、15~21日目に採血と採便をした。 ①便中エンドトキシンと全身免疫・腸管免疫との関連 8症例を対象とした。便中エンドトキシン・便中IgAを定量評価し、便中細菌叢のメタ16S解析を行った。また、血中リンパ球サブセット測定(CD3,CD4,CD8,CD56の各陽性細胞の割合、CD4+CD25+Foxp3+の割合)、血中免疫グロブリン(IgA,IgG,IgM)の定量評価を行った。その結果、便中エンドトキシンはクレブシエラ属との間には正の相関があり、便中IgAとは負の相関、血中IgAとは正の相関があった。また、便中エンドトキシンとCD4陽性細胞とは負の相関があり、CD8細胞とは正の相関があった。以上から、便中エンドトキシンは全身免疫・腸管免疫と関連があった。 ②腸内細菌叢と白血球数(好中球・リンパ球・単球)との関連 同様の8症例を対象とし、各細菌門・細菌属と白血球数との関連を見た。好中球数は多くの嫌気性菌と負の相関、リンパ球数は好気性の強い菌と正の相関、単球は腸内細菌叢の多様性と負の相関にあり、多くの嫌気性菌と負の相関にあった。腸内細菌叢と白血球とは関連があった。
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