最終年度では腸内細菌叢の改変により脳動脈瘤の形成、破裂に影響を与えるかの検討を行うため、バンコマイシンを50mg/kg/dayにてマウスに経口投与を行なった。実験としてはIsoflavone free diet群、Daidzein群、およびDazidzein+バンコマイシン群の3群間における脳動脈瘤形成、破裂率を比較した。脳動脈瘤破裂に関しては3群間で明らかな有意差はなかったが、脳動脈瘤形成に関してはIsoflavone free diet群 vs Daidzein群 vs Daidzein +バンコマイシン群; 87% vs 52% vs 85%とDaidzeinで有意に動脈瘤形成を抑制し、バンコマイシンを投与することで、dysbiosisを起こして脳動脈瘤形成抑制効果が消失した。以上より腸内細菌叢の安定が脳動脈瘤の形成に非常に重要な役割を担っていることが示された。 また脳血管組織を採取し、Daidzein群とIsoflavone free diet群においては炎症細胞の浸潤がDaidzein群で有意に少なく、炎症性変化を抑制することで脳動脈瘤の形成を抑制することに寄与していると考察される。また酸化ストレスに関しても同様に脳動脈瘤壁中膜から外膜にかけて酸化ストレスの代謝産物である8-Hydroxy-2’-deoxyguanosineの集積が抑制されることを確認した。 以上より研究期間全体としてエストロゲン類似作用をもつイソフラボンの摂取は腸内細菌を通して代謝されることで脳血管保護作用を有することを示した。
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