研究実績の概要 |
子宮頸癌ワクチンは有効性が広く証明されているが,定期接種プログラムの定める適切な年齢(12-16歳)でワクチン接種を受けた若年女性のなかにも本来ワクチンで予防されるはずのヒトパピローマウイルス(HPV)16/18に感染し前癌病変・子宮頸癌を生じる"ブレイクスルー症例"が存在する.本研究の目的は1) ブレイクスルー症例を対象に初交年齢・ワクチン接種年齢を聴取することで接種時に既感染が疑われる患者の割合を推定する2) 初交前に適切にワクチン接種を行っていた症例ではHPVゲノム解析中和活性測定を行い,現行のワクチンでは予防できない変異ウイルス(variant) を探索することである.今年度もブレイクスルー症例を集積した.またワクチン接種年齢や初交年齢によるHPV16/18陽性率が変わるかを検討したところ初交前接種では0% であるのに対して、初交後3年以内では12.5% ,初交後4年目以降の接種では40.0%であり、ワクチン未接種者での47.0% と大差がないことが判明した.MINTスタディで得られたアンケート調査によると,CIN2-3/AIS(高度前癌病変)患者の初交年齢の中央値は17歳であり、14歳以下での性交経験率は9.2%、16歳では47.2%、18歳では77.1%となり、15歳以降で急激に上昇した.接種年齢別の効果について検討したところ,高度前癌病変におけるHPV16/18陽性率は12-15歳での接種では0%,16-18歳での接種で13.0%, 19-22歳での接種では35.7%,23歳以上の接種では39.6% (n=91) となり、接種年齢が上がるとHPVワクチンの効果がかなり低くなることがわかった 。この成果を日本産科婦人科学会学術講演会で発表した。
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