研究課題
本研究により、破骨細胞様巨細胞を伴う平滑筋肉腫(LMS with OLGCs)において、腫瘍細胞がRUNX2と骨芽細胞分化に関連する他のマーカーを高い発現していることが分かった。この結果から、LMS with OLGCsは特定の骨芽細胞型LMSである可能性が示唆される。最近の研究では、RUNX2が腎臓がんや肺がんにおいて予後不良因子であることが示されている。このことから、私たちは、肺扁平上皮癌やがん巣周囲の線維症性線維芽細胞、腎臓肉腫様癌でRUNX2が高発現していることを発見した。さらに、本研究において、RUNX2を発現する腎細胞癌培養細胞では、RUNX2低発現の細胞と比較し、特徴的な短紡錘形状を示した。この細胞形態は、子宮平滑筋肉腫、腎肉腫様癌、肺低分化扁平上皮癌で観察される形態と類似しており、骨芽細胞分化による特徴的な細胞形態が誘導される可能性が示唆された。これは、骨芽細胞分化が破骨細胞様巨細胞を伴う平滑筋肉腫に限定されるものではなく、肺や腎臓などの上皮性悪性腫瘍やがん関連線維芽細胞でも起こる可能性を示している。またその他の臓器で、同様の短紡錘形、多形性を示す高悪性度癌や肉腫においても、破骨細胞様巨細胞を伴っていない腫瘍で、骨芽細胞マーカーを発現していることを数症例発見しており、RUNX2は、臓器横断的に、これらの予後不良な疾患の治療ターゲットになる可能性があると考えられた。
3: やや遅れている
理由 研究当初、予定していた平滑筋細胞 へのRUNX2誘導がうまくいかなかったため、RUNX高発現の腎細胞癌、低発現の腎細胞癌培養細胞を代用して、細胞形態の変化や、分泌細胞の変化について検討した。また、腎癌、肺癌においてRUNX2が予後不良因子であるという報告があり、子宮癌肉腫とともに発現検討を行い、腎の肉腫様癌および肺扁平上皮癌において子宮平滑筋肉腫と同様、RUNX2を含む骨芽細胞マーカーの発現を認めたことより、研究計画を変更し、これらの腫瘍での発現解析を行っている。また、子宮癌肉腫では、発現が乏しかった。現在、腎癌および肺癌においての解析を投稿予定である。
破骨細胞様巨細胞を伴う肉腫の場合は、破骨細胞様巨細胞という特徴的な細胞が出現することから、判別、症例の抽出がHE染色で行えた。現在までの研究結果から、破骨細胞様巨細胞を伴わない、高悪性度の子宮肉腫や腎癌、肺癌でも骨芽細胞分化を示す腫瘍の存在が明らかとなり、培養細胞の実験から、組織においても骨芽細胞分化を伴う腫瘍では特徴的な細胞形態を示す可能性があるため、人工知能を用いた深層学習モデルを作成し、骨芽細胞分化を伴う腫瘍をHE組織で分類可能かについて検討を行う。また現在まで解析した骨芽細胞マーカーを発現している腫瘍群は、いずれも予後不良群であり、さらにその他の予後不良群での発現検討を進める。
新型コロナウィルス流行のため、学会がwebとなり、デジタルでの発表内容提出が求められていたことから、演題提出をひかえる傾向にあり、また実験に必要な消耗品の遅延、濃厚接触者、感染者発生などの自宅待機など、様々な行程 が遅れることとなり、次年度使用額が生じた。次年度は、学会発表や破骨細胞様巨細胞を伴わない短紡錘形多形腫瘍における骨芽細胞マーカーについての発現と、その特徴的形態をHEで判定できる人工知能深層学習モデル作成を同時に行っていく。
すべて 2022 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Kidney Int
巻: 102 ページ: 276-1290
10.1016/j.kint.2022.07.031
Diagn Cytopathol
巻: 50 ページ: E217-E222
10.1002/dc.24970
Pediatr Res
巻: ahead of print ページ: ahead of print
10.1038/s41390-022-02332-0
https://pathology-nms.org/gynecological-pathology/