研究課題/領域番号 |
20K09738
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
三輪 正人 順天堂大学, 医学部, 客員教授 (80247650)
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研究分担者 |
山本 誠 東京理科大学, 工学部機械工学科, 教授 (20230584)
高田 弘弥 日本医科大学, 医学部, 准教授 (30824833)
小川 令 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (70398866)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | メカノバイオロジー / 呼吸気流 / 鼻粘膜上皮 / ネブライザー / メカノセラピー / 嗅覚障害 / 副鼻腔炎 / CFD解析 |
研究実績の概要 |
気道上皮は、呼吸気流、大気の温度、湿度、気圧などのメカノストレスを常に受けながら、その変化を感じ取り(メカノセンシング)、バリア機能、分泌、粘液繊毛輸送機能、嗅覚などの重要な働きをダイナミックにおこなっている。なかでも上皮バリア機能異常は、様々な慢性炎症性疾患の上流に位置すると考えられる。適度なメカノストレスは、気道上皮の電気的バリア機能を亢進させることを我々は過去に証明しているが、「振動圧刺激が鼻粘膜上皮バリア機能をupregulateできる」の仮説を実証することを本研究課題の目的としている。 昨年度は、細胞内Ca2+濃度およびK+変化に着目し、以前からおこなっている呼吸などによる物理的刺激を模した圧(振動)ならびに炎症状態を模したヒスタミン刺激下での粘膜上皮の応答の検証をおこなった。その結果、炎症刺激により惹起されたCa2+の持続的流入が、振動圧刺激により抑制された、炎症刺激によって顕著に抑制されたK+チャネル開口が改善されたことを見いだしている。 一方、本年度は実際にヒト鼻副鼻腔粘膜各部位においてかかっている圧を検証するため、まず嗅裂部、上顎洞自然口部の鼻呼吸時の数値流体力学的 ( CFD, Computational Fluid Dynamics ) 解析を開始した。 その結果、振動を与えることにより、嗅裂を通過する体積流量および壁面せん断応力(シアストレス)が顕著に増加する例が確認された。中鼻道の体積流量も増加していた。 これらの結果から、嗅覚障害、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などの上気道粘膜上皮の病態に対して、振動圧刺激のような物理的刺激を加える医療「メカノセラピー」の有用性が示唆され、高額な分子標的薬などの薬剤に頼らない新規先駆的治療法の開発の基礎となると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
振動圧刺激による気道上皮細胞のチャネル活性の変化の実験がコロナ禍もありやや滞っているが、振動による呼吸器流の変化に関しての数値流体力学的(CFD)解析は当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
振動刺激による上顎洞など副鼻腔への影響のCFD解析も開始する。 また、吸気だけではなく呼気時のCFD解析を、嗅裂(嗅上皮)部、中鼻道、各副鼻腔でおこない、においの呼気での受容機構、吸入薬の経鼻呼出の影響についても考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響もあり、気道上皮細胞の培養の準備・継続が滞っているため。
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