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2021 年度 実施状況報告書

好酸球性副鼻腔炎におけるTRPV3の機能解析と治療戦略

研究課題

研究課題/領域番号 20K09753
研究機関福井大学

研究代表者

加藤 幸宣  福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (00748981)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード好酸球性副鼻腔炎 / TRPV3
研究実績の概要

申請者は、次世代シーケンサーを用いて鼻茸のRNA-seqにおけるtranscriptome解析を行ってきた。その結果、TRPV3が好酸球性副鼻腔炎の鼻茸、特に鼻粘膜上皮に強く発現しており、TRPV3と好酸球に正の相関があることを発見した。TRPV3が好酸球性副鼻腔炎の病態に深く関与していることは間違いないが、どのように難治性鼻茸に関わるかは不明である。申請者は、好酸球性副鼻腔炎におけるTRPV3の機能解析に関する研究を行っている。
上皮細胞から産生される上皮由来サイトカイン、好酸球遊走因子、cystatin familyの一つであるCST1や、線維芽細胞から産生されるperiostinは、好酸球性副鼻腔炎の病態に関わる重要な因子である。そこで、気道上皮細胞株や線維芽細胞株を利用して、TRPV3活性によってそれぞれの細胞にどのような影響を及ぼすかを検討した。鼻茸上皮細胞株・鼻茸線維芽細胞株をTRPV3 agonistで刺激し、Th2/好酸球性炎症関連因子(TSLP、IL-33、IL-25、Eotaxin 1-3、RANTES、CST1、periostin、IL-5)の産生をreal-time PCRで解析した。気道上皮細胞株・線維芽細胞株をTRPV3アゴニストで刺激すると、好酸球遊走・活性化因子であるRANTESの発現が有意に上昇した。TRPV3アンタゴニストを加えるとRANTESの発現は抑制された。つまり、鼻粘膜においてTRPV3が好酸球遊走能を有する可能性が示唆された。また、鼻茸上皮細胞株をdsRNAで刺激すると、TRPV3の発現が上昇する。dsRNAによる炎症反応がTRPチャネルを介している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請者は、好酸球性副鼻腔炎の鼻茸内に、カルシウム透過性カチオンチャネルであるTRPV3が高発現していることを発見した。TRPチャネルは、ナトリウムイオンやカルシウムイオンを細胞内に透過させる非選択的陽イオンチャネルである。カルシウムイオンは、セカンドメッセンジャーとして細胞内における様々な反応の根幹を担っている。好酸球性副鼻腔炎においても同様であり、カルシウムイオン流入の制御は、鼻茸組織内での2型炎症に関わる様々な反応を抑制し、Th2/好酸球性炎症を抑える効果が期待される。TRPチャネルの中でも、特にTRPV3は好酸球性副鼻腔炎の病態に密接に関連している。つまり、TRPV3を制御することができれば、これまでとは全く異なる好酸球性副鼻腔炎の新規治療薬の開発が可能となると考えられる。実際に本研究において、気道上皮細胞株・線維芽細胞株をTRPV3アゴニストで刺激すると、好酸球遊走・活性化因子であるRANTESの発現が有意に上昇した。さらにTRPV3アンタゴニストを加えるとRANTESの発現は抑制された。鼻粘膜においてTRPV3が好酸球遊走能を有する可能性が示唆された。鼻茸上皮細胞株をdsRNAで刺激すると、TRPV3の発現が上昇することが明らかとなった。dsRNAによる炎症反応がTRPチャネルを介している可能性が示唆された。
以上より、好酸球性副鼻腔炎におけるTRPV3の機能解析が進んでおり、本研究課題の進捗状況として、おおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

好酸球性副鼻腔炎におけるTRPV3の機能解析を行う。
① 細胞内カルシウムイオン濃度の測定:鼻茸内でのTRPV3の作用が、カルシウムイオンを介した反応であるかを評価する。鼻茸上皮細胞株・鼻茸線維芽細胞株・肥満細胞株をTRPV3 agonist(I-menthol;1-1000uM)で刺激し、細胞内のカルシウムイオン濃度の動態を解析する。カルシウム濃度を測定する蛍光プローブは、Fluo 4-AMあるいはFura 2-AMを使用し、蛍光プレートリーダーや蛍光顕微鏡を用いて評価する。
② 好酸球性炎症モデルマウスを用いて、TRPV3と好酸球浸潤の関連を解析する。具体的には、TRPV3アゴニストやTRPV3アンタゴニストをマウスに経鼻投与し、鼻粘膜好酸球浸潤を評価する。また、TRPV3と鼻職所IgEとの関連を解析し、局所IgE産生と難治性鼻茸の病態を明らかにする。
③アラキドン酸代謝によって生成されるエイコサノイドの一つ、CysLTは強力な炎症誘導作用によって好酸球性副鼻腔炎の病態に関与している。CysLTとCysLT受容体拮抗薬が、TRPV3活性とカルシウムイオン動態に与える影響を検証する。

次年度使用額が生じた理由

(理由) 本研究を着実に遂行するにあたり、手術で採取した鼻茸から上皮細胞や線維芽細胞を精製し、培養するための試薬が必要であった。また、TRPV3 agonistや antagonistをはじめとする培養細胞を刺激するための各種試薬、刺激後の解析に必要なreal time PCRのための試薬やELISAキットが必要であった。また、成果を 発表するための国内旅費が必要であった。研究を進めていく上で本年度使用額は適切な額であった。次年度研究に向けて残額を繰り越し、使用することが望ましいと考えられた。従って次年度使用額が生じた。
(使用計画) 各種細胞株の精製、培養に必要な試薬に使用する。また、マウスを対象とした実験を遂行するため、マウスの購入、飼育費に使用する。マウスに投与する抗原、 組織染色、フローサイトメトリーに必要な試薬などを用いて実験を行う。研究成果は英語論文にて発表する。また、成果を日本耳鼻咽喉科学会、日本鼻科学会、 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会、日本アレルギー学会、国際学会などで発表することで社会への発信を予定しており、使用を計画している。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Elevated Serum Leptin Levels in Patients With Eosinophilic Chronic Rhinosinusitis.2022

    • 著者名/発表者名
      Imoto Y, Ueki S, Kato Y, Yoshida K, Morikawa T, Kimura Y, Kidoguchi M, Tsutsumiuchi T, Koyama K, Adachi N, Ito Y, Ogi K, Sakashita M, Yamada T, Schleimer RP, Takabayashi T, Fujieda S.
    • 雑誌名

      Front Pharmacol.

      巻: 12 ページ: 793607

    • DOI

      10.3389/fphar.2021.793607.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Involvement of activation of mast cells via IgE signaling and epithelial cell-derived cytokines in the pathogenesis of pollen-food allergy syndrome in a novel murine model.2021

    • 著者名/発表者名
      Kato Y (Corresponding Author), Morikawa M, Kato E, Yoshida K, Imoto Y, Sakashita M, Osawa Y, Takabayashi T, Kubo M, Miura K, Noguchi E, Fujieda S.
    • 雑誌名

      J Immunol.

      巻: 206 ページ: 2791-2802

    • DOI

      10.4049/jimmunol.2000518.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Increased Thrombin-Activatable Fibrinolysis Inhibitor in Response to Sublingual Immunotherapy for Allergic Rhinitis.2021

    • 著者名/発表者名
      Yoshida K, Takabayashi T, Imoto Y, Sakashita M, Kato Y, Narita N, Fujieda S.
    • 雑誌名

      Laryngoscope.

      巻: 131 ページ: 2413-2420

    • DOI

      10.1002/lary.29563.

  • [学会発表] モデルマウスを用いた 花粉-食物アレルギー症候群の基礎研究2021

    • 著者名/発表者名
      加藤幸宣、森川太洋、加藤永一、吉田加奈子、意元義政、 坂下雅文、大澤陽子、高林哲司、藤枝重治
    • 学会等名
      第1回 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
  • [学会発表] 花粉-食物アレルギー症候群における 免疫治療の可能性2021

    • 著者名/発表者名
      加藤幸宣、加藤永一 、坂下雅文、大澤陽子、藤枝重治
    • 学会等名
      第34回 日本口腔・咽頭科学会
  • [学会発表] マウスのアレルギー炎症における鼻ILC2sの役割2021

    • 著者名/発表者名
      加藤幸宣、森川太洋、吉田加奈子、木戸口正典、 意元義政、坂下雅文、高林哲司、藤枝重治
    • 学会等名
      第60回 日本鼻科学会
  • [学会発表] 新規モデルマウスを用いた 花粉-食物アレルギー症候群の病態解明2021

    • 著者名/発表者名
      加藤幸宣、森川太洋、加藤永一、吉田加奈子、意元義政、 坂下雅文、大澤陽子、高林哲司、藤枝重治
    • 学会等名
      第70回 日本アレルギー学会学術大会

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公開日: 2022-12-28  

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