脈管奇形の悪化メカニズムを探る ～血管平滑筋を巡る分子制御機構の解明～

2023 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 20K09864
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 野村 正 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (30529566)
• 研究分担者: 寺師 浩人 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (80217421) ; 榊原 俊介 神戸大学, 医学部附属病院, 特命講師 (50444592) ; 橋川 和信 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90403237) ; 大崎 健夫 神戸大学, 医学研究科, 非常勤講師 (30444582) ; 櫻井 沙由理 (大澤沙由理) 神戸大学, 医学部附属病院, 非常勤講師 (20594534) ; 高須 啓之 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (40566022)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 脈管奇形 / 静脈奇形 / 血管平滑筋細胞

研究実績の概要

脈管奇形は先天性の脈管形成異常であるわれわれは本研究を通じて、脈管奇形のうち特に静脈奇形における悪化機序について、主に「血管平滑筋細胞」に焦点を当てて分子生物学的側面より評価し、本疾患の分類・診断基準作成の補助ならびに疾患治療の確立へ結びつけることを目的とした。
静脈奇形において免疫組織学的手法を用いて、主に形態についての検討を行った。当科で治療を行った口唇の静脈奇形の患者ち、硬化療法後の病変の退縮が不十分で同じ病変の切除を行った群（硬化療法併用群）６例と、硬化療法を行わずに外科的加療のみを行った群（手術単独群）３例にわけて、切除された検体の病理組織をHE染色、Elastica van Gieson（EVG）染色を行った。画像処理技術を用いてBackground subtraction操作を行い、嚢胞部分を含めた病変全体の面積(total area)と、嚢胞部分を除いた断面の面積(non-cystic area)を測定した。加えて、EVG染色画像をもとに膠原線維、弾性線維、筋線維部位を主に反映する赤、紫、黄色の３色でcolour deconvolutionを行い、各色で染色された組織の面積(red stained area, purple stained area, yellow stained area)を測定した。非嚢胞性部位は、硬化療法併用群で85％、手術単独群で80％であった。膠原線維を反映する赤色部位は前者が49.9%、後者が36.8%、弾性線維を反映する紫部分は前者25.8％、後者27.7%、筋線維を反映する黄色部分は前者29.6%、後者13.9%であった。治療前後のMRIで体積変化を認めなかったことから総合的に判断すると硬化療法後の口唇VM（静脈奇形）では、未実施のVMと比較して膠原線維が増加したことから硬化療法後は線維性組織への置換が起きたことが示唆された。
加えて「血管平滑筋細胞」の細胞培養を中心に行い免疫組織学的検討ならびにMTTアッセイによる増殖能の確認を行い細胞培養法に関する手技の確立を行った。

研究成果

• [雑誌論文] The Prospective Natural History Study of Patients with Intractable Venous Malformation and Klippel-Trenaunay Syndrome to Guide Designing a Proof-of-Concept Clinical Trial for Novel Therapeutic Intervention. (2024)
  • 著者名/発表者名: Fujino A, Kuniyeda K, Nozaki T, Ozeki M, Ohyama T, Sato I, Kamibeppu K, Tanaka A, Uemura N, Kanmuri K, Nakamura K, Kobayashi F, Suenobu S, Nomura T, Hayashi A, Nagao M, Kato A, Aramaki-Hattori N, Imagawa K, Ishikawa K, Ochi J, Horiuchi S, Nagabukuro H.
  • 雑誌名: Lymphat Res Biol. 巻: 22 ページ: 27-36
  • DOI: 10.1089/lrb.2023.0023.
  • 査読あり
• [雑誌論文] 特集 動静脈奇形症例集[3]-躯幹- 胸郭変形を生じた小児体幹部動静脈奇形の1例 (2024)
  • 著者名/発表者名: 野村 正、武田 玲伊子、寺師 浩人
  • 雑誌名: 形成外科 巻: 67 ページ: 137～142
  • DOI: 10.18916/keisei.2024020007
• [雑誌論文] 特集 動静脈奇形症例集[2]-顔面- 塞栓硬化療法が有効であった耳介動静脈奇形の1例 (2024)
  • 著者名/発表者名: 武田 玲伊子、野村 正、上嶋 英介
  • 雑誌名: 形成外科 巻: 67 ページ: 43～47
  • DOI: 10.18916/keisei.2024010010
• [雑誌論文] A Clinical Study of Histopathological and Clinical Image Changes After Sclerotherapy of Lip Venous Malformations. (2023)
  • 著者名/発表者名: Maruguchi H, Nomura T, Takeda R, Sakakibara S, Terashi H.
  • 雑誌名: J Craniofac Surg. 巻: 34 ページ: 2410-2412
  • DOI: 10.1097/SCS.0000000000009563. Epub 2023 Aug 3.
  • 査読あり
• [雑誌論文] 特集 動静脈奇形症例集[1]-手足- 指に限局した動静脈奇形の外科的治療-Nidusの減量と静脈皮弁による軟部組織再建の1例- (2023)
  • 著者名/発表者名: 野村 正、大﨑 健夫、寺師 浩人
  • 雑誌名: 形成外科 巻: 66 ページ: 1283～1287
  • DOI: 10.18916/keisei.2023110011
• [雑誌論文] Treatment for Sequelae after Infantile Hemangioma Involution on the Body Surface (2023)
  • 著者名/発表者名: Nomura Tadashi、Takeda Reiko、Terashi Hiroto
  • 雑誌名: The Journal of Japan Society for Laser Surgery and Medicine 巻: 43 ページ: 279～284
  • DOI: 10.2530/jslsm.jslsm-43_0032
• [学会発表] パネルディスカッション3長期経過から得たものⅡ（血管腫・血管奇形）】手指動静脈奇形症例の長期成績 (2023)
  • 著者名/発表者名: 野村正、榊原俊介、寺師浩人
  • 学会等名: 第66回日本形成外科学会総会・学術集会（長崎）
• [学会発表] 【ビデオシンポジウム】脈管奇形の手術療法 ～手術用顕微鏡を用いた繊細な摘出術ならびに再建術～ (2023)
  • 著者名/発表者名: 野村正，武田玲伊子、榊原俊介、寺師浩人
  • 学会等名: 第43回日本静脈学会総会（松山）
• [学会発表] 【パネルディスカッション2：脈管奇形に対する薬物療法が有効と判断された症例】当科で経験したシロリムス内服療法が有効と判断された脈管奇形症例 (2023)
  • 著者名/発表者名: 野村正、武田玲伊子、波多祐紀、榊原俊介、寺師浩人
  • 学会等名: 第19回日本血管腫血管奇形学会（名古屋）
• [学会発表] 【シンポジウム6：脈管奇形・リンパ管の画像診断と治療戦略（診断）】画像診断から判断する脈管奇形の治療戦略 ～形成外科医の立場から～ (2023)
  • 著者名/発表者名: 野村正、上嶋英介、祖父江慶太郎、寺師浩人
  • 学会等名: 第59回日本放射線医学学会秋季臨床大会（徳島）
• [学会発表] 【血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン改訂とこれからの診療】リンパ管奇形におけるガイドライン改訂とこれからの診療への活用 (2023)
  • 著者名/発表者名: 野村正、武田玲伊子、丸口勇人、寺師浩人
  • 学会等名: 第64回日本脈管学会学術総会（横浜）
• [学会発表] 【ビデオパネル】四肢動静脈奇形に対する切除再建手術における移植床血管の準備 (2023)
  • 著者名/発表者名: 野村正、大﨑健夫、政岡浩輔、青木大地、上田美怜、武田玲伊子，榊原俊介、寺師浩人
  • 学会等名: 第50回日本マイクロサージャリー学会学術集会