研究課題/領域番号 |
20K10142
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
井 隆司 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (30733448)
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研究分担者 |
住田 吉慶 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (50456654)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 放射線性唾液腺萎縮症 / 線維化 / CD34 |
研究実績の概要 |
頭頚部癌患者に対する放射線治療に併発する放射線性唾液腺萎縮症は患者のQOLを著しく低下させるが、その治療法は確立していない。またその典型的な病理像である線維化組織にみられる過剰な細胞外マトリックス(ECM)を産生する線維芽細胞の由来や、その活性化機序についての詳細は解明されていない。研究代表者は、これまでの研究により唾液腺に常在するCD34陽性細胞(Tissue Resident CD34positive cells; TR34)が放射線障害を受けた唾液腺組織において、血管障害による組織環境の刺激により、血管障害部に遊走・集積し、一部が周皮細胞(血管平滑筋/ペリサイト)に分化することで、障害早期には血管修復に寄与することが示唆された。その後(照射後4週後)には、周皮細胞に分化せずに安定に存在していたTR34が、筋線維芽細胞への分化を開始し、過剰なECM産生を行い組織の線維化を促す現象の一端を見出した。本研究では、早期には血管修復に寄与するTR34が、組織環境の変化により過剰ECM産生を行う筋線維芽細胞へ分化・誘導する分子機序を解明することにより、線維化抑制に働く新規分子標的薬開発の可能性を検討することを目的としている。 今年度は、放射線照射後、TR34を筋線維芽細胞へ分化誘導する組織環境要因に着目した。C57BL/6マウスの頭頚部のみに放射線照射した顎下腺を回収し(照射後1, 2, 4, 20週後)、炎症性関連マーカーの遺伝子発現を検討し、比較的早期における炎症性関連マーカーの遺伝子発現上昇かつ炎症の遷延化を認めた。炎症が遷延化することから放射線照射による直接的な細胞死以外の機序による要因が示唆された。またマウス顎下腺組織より唾液腺細胞を単離・培養し、動物実験における放射線障害後の障害組織におけるタンパクの網羅的な解析と併せて、培養細胞でも炎症の遷延化の機序の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、TR34の筋線維芽細胞分化転換に関わる分子の検討を行った。放射線照射後、TR34を筋線維芽細胞へ分化誘導する要因に唾液腺組織環境の変化の寄与が大きいことに着目し、頭頚部のみに放射線照射したC57BL/6マウスの顎下腺を回収し(照射後1, 2, 4, 20週後)、炎症性サイトカインを中心にリアルタイムPCRの定量性解析と、ELISA法によるタンパク質の定量を行った。また併行して差異がみられたタンパク発現を免疫組織化学染色で確認している。 これらより得られた遺伝子発現量・タンパク質の定量データよりTR34から筋線維芽細胞分化転換を誘導する組織環境要因の検討を行っている。 同時にマウス顎下腺より唾液腺細胞をコラゲナーゼ処理により単離し、培養を行い、マウス唾液腺細胞の培養条件を確立した。続いて培養唾液腺細胞に対して放射線照射を行い、培養上清中のタンパク質の解析を行い、マウス生体における障害唾液腺で誘導される組織環境変化との相関性を検討している。 以上より、予定通りに進んでいることからおおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、TR34を筋線維芽細胞へ分化誘導する要因に放射線照射により誘導される唾液腺組織環境の変化の寄与が大きいことが示唆され、炎症性サイトカインが蓄積する機序、さらに炎症を遷延化させる機序を中心に解析を行う予定である。これらの解析より得られた遺伝子発現量・タンパク質の定量データよりTR34から筋線維芽細胞分化転換を誘導する分子・シグナル伝達系の検討を行う予定である。これら実験により得られた知見を国内外の学会で発表し、有識者との意見交換等と通して、論文作成・投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:研究成果を現地での学会発表で行う予定であったが、コロナ蔓延の影響で現地でなく、ZOOMでの発表に切り替わり、現地までの旅費・滞在費等が繰り越しとなった。 使用計画:延期となった唾液腺学会や、シェーグレン学会における現地発表のための旅費に充てる予定。
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