研究課題/領域番号 |
20K10270
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
西口 美由季 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10253676)
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研究分担者 |
鵜飼 孝 長崎大学, 病院(歯学系), 教授 (20295091)
近藤 好夫 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (30581954)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 9型分泌装置 / P.melaninogenica / 歯周病 / 口腔常在菌 |
研究実績の概要 |
Prevotella melaninogenica は誤嚥性肺炎に関連する口腔常在細菌で、 新生児から高齢者まで検出される。P. melaninogenica は口腔感染症の検体から多く分離されるとともに、婦人科領域感染症の原因菌ともなる。これまで P. melaninogenica の病原因子分泌機構(9型分泌装置)の解析を行ってきた。P. melaninogenica の9型分泌装置の変異株は赤血球凝集能、動物実験での病原性が著しく低下しており、本菌の9型分泌装置と病原性との関係性が示唆された。口腔内にはP. melaninogenica と同じくバクテロイデーテス門に属し、9型分泌装置を用いて病原性を発揮していると考えられる菌種が多く存在する。Porphyromonas gingivalis等の主に歯周病細菌で報告される。これらの細菌も含めて、9型分泌装置が口腔疾患(主に歯周病)に関与しているのか、また分泌装置の機能抑制でもって病原性の制御は可能なのか、歯周病動物モデルを用いて検証する。 歯周病感染マウスモデルを確立するため、これまで歯周病菌感染マウスモデルで報告の多いP. gingivalisの菌株を用いて感染実験を行なった。摂取菌量や感染回数、感染期間について複数条件で感染実験を行い、顎骨を含めた歯周組織の切り出し、包埋、病理切片の作製、組織切片の免疫染色およびマイクロCTを用いた歯槽骨吸収の計測を行った。また、昨年度に引き続き、同じPrevotella 属である、Prevotella nigrescensについて、口腔分離株を用いて、9型分泌装置の構成分子遺伝子変異株の作製を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き、新たな長崎大学天然抽出物・化合物ライブラリーを用いて、主要な歯周病菌であるPorphyromonas gingivalis に対する9型分泌装置の機能抑制候補化合物を得ている。これについて、再度、候補化合物を分与していただき、再試験を行ない、再現性の確認を行った。再試験の結果から、再現性のないものを外し、候補を絞った。 「歯周病混合感染マウスモデルの構築」歯周病感染マウスモデルの構築のため、結紮法やワイヤー法等のいくつかの方法を試みた。マウスにP. gingivalisの野生株を用いて感染実験を行なった。摂取菌量や感染回数、感染期間について複数条件で感染実験を行い、顎骨を含めた歯周組織の切り出し、包埋、病理切片の作製、組織切片の免疫染色およびマイクロCTを用いた歯槽骨吸収の計測を行った。
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今後の研究の推進方策 |
「歯周病混合感染マウスモデル」構築をめざして、まずは、P. gingivalis の野生株をマウスに感染させている。これまで、マウスモデルでは結紮法やワイヤー法等のいくつかの方法が報告されており、そのうち2つの方法を試みている。2021年度に引き続き、歯周組織の歯槽骨の吸収を測定し、モデルにおける歯周病の指標となる数値の検出をおこなう。また、大臼歯部周辺の組織切片を作製する。炎症マーカーに対する抗体を用いて免疫組織染色し、免疫担当細胞の存在を確認し、組織の炎症像を検討する。 混合感染マウスモデルの構築のために、Prevotella nigrescensの9型分泌装置構成分子の変異株取得の試みを続ける。今のところ安定して遺伝子操作が行える菌株が得られていない。新たな口腔分離菌株の収集と、遺伝子操作による変異株作製を試みる。 「化合物による分泌装置の制御」長崎大学天然抽出物・化合物を用いて、歯周病菌Porphyromonas gingivalis に対する、化合物スクリーニングを引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加のための旅費を計上していたが、コロナ禍のためオンライン開催となった。その経費を「歯周病混合感染マウスモデルの構築」のための設備使用料、消耗品費とし、次年度使用することとした。
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