研究実績の概要 |
【研究の背景】高齢者の院内転倒は医療安全の上で重要な回避すべき事象である。そのため、入院時に看護師などが転倒予測を行い、転倒予防策を講じている。一方、院内転倒が生じると、医療安全部署に報告され、インシデントとして記録される。院内転倒を事前に正しく予測されていたかがわかる仕組みがある。 【方法】脳神経内科疾患を主として入院した高齢者1607名を対象とし、解析した。院内転倒者で十分な記録がある症例は110名、167回転倒であった。①事前予測されていた院内転倒群と事前予測がされていなかった群を比較し、被害状況ラダーを用いて、被害状況の差と患者プロファイルを比較した。②改訂泉式転倒予測スケールを用いた事前予測率が低かったため、他の予測スケールを用ると予測率が高まるかということをこの症例群を用いてシュミレーションした。そのシュミレーションによって、どのような項目を予測因子として加えれば良いかを検討した。 【結果】事前予測されて院内転倒した群と予測されていなかった群では、予測されていなかった群で、やや高い傾向にあったが、患者プロファイルに差はみられなかった。次に、改訂泉式転倒予測スケールの予測率は、66.4%、Morse式では97.3%, Johns-Hopkins式では、94.5%であった(いずれも対泉式転倒予測スケールとの比較でP<0.001, OR 8.79 95%CI[3.5-25.3], OR 18.08, 95%CI[5.4-60.8])であった。この差の要因は、薬剤因子の有無であった。Morse式とJohns-Hopkins式の比較では有意差はなく、治療デバイスの有無は転倒予測に貢献しないことが示された。 【結論】転倒予測支援のため、電子カルテシステムのマイニング機能を用いて、実装化した。実装化の検証が必要である。
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