研究課題/領域番号 |
20K10420
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研究機関 | 大阪成蹊大学 |
研究代表者 |
海野 大 大阪成蹊大学, 経営学部, 教授 (90639064)
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研究分担者 |
中村 翔 神奈川県立保健福祉大学, ヘルスイノベーション研究科, 講師 (00740656)
阪口 昌彦 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 准教授 (70749001)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自立支援型介護 / 最適介護報酬設計 / 潜在曲線モデル / 確率最適制御モデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,要介護高齢者に対する自立支援型介護の要介護度改善に対する有効性の検証とその効果の定量化,並びに,自立支援型介護を一種の確率制御システムとして数理モデル化することである.2020年度は研究の第1段階として,要介護認定情報・介護レセプト等情報の入手と解析を行う計画としていた. 要介護認定情報・介護レセプト等情報は,介護保険法に基づき厚生労働省が収集,管理する情報であり,情報の提供及び利用にあたっては,厚生労働大臣の承諾が必要となる.このため,2020年4月に情報の提供に関する申出の申請を行い,厚生労働省の有識者会議での審議を経て,同年7月に承諾を得た.その後,2021年2月に当該情報の提供を受けたところである. 情報の提供を受けるに当たり,事前にデータ解析計画を立案し,それに基づき具体的なデータ抽出項目を決定する必要があることから,2020年度は主に解析方針の検討を行った.要介護認定情報・介護レセプト等情報には,介入(自立支援型介護)の内容や量はレセプト情報により月次でデータを得られるのに対し,介入の結果としての要介護の状態変化を表す要介護度は年次もしくは2年単位でしか得られない,つまり欠測値が多いという特徴がある.その対応として,(1)要介護度の欠測値を補完する(多重代入法,尤度法等),あるいは,(2)要介護度が測定されている2時点間の月次介入量を累積して年次データに変換した介入量を用いる,が考えられる.(1)については,情報提供前の時点では有効な方法を確定できないことから,暫定的に(2)の方法を採用することとした.このため,要介護度について可能な限り多数の測定時点が得られるように抽出条件を設定した. 今後は,(2)の方法に基づき,反復分散分析や潜在曲線モデルなどにより自立支援型介護の効果の推定を進めるとともに,(1)の方法についても取り組んでいく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
厚生労働省からの要介護認定情報・介護レセプト等情報の提供が,当初計画から大幅に遅れたことによる.その原因は,新型コロナウイルス蔓延により,情報提供申出の申請から情報提供の審査を実施する厚生労働省の有識者会議開催までに2ヶ月以上要したこと,その後のデータ抽出作業が通常3ヶ月程度であるところが半年以上を要したことである.抽出作業が遅延した理由は,要介護認定情報・介護レセプト等情報のデータベース構造上,当方の指定した抽出条件ではシステムの処理負荷が大きくなり過ぎることが判明し,その対応に時間を要したためと聞いている. また,自立支援型介護に取り組む介護事業者の調査についても,新型コロナウイルス蔓延のため2020年度内の実施を見送った.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では,2021年度から第2段階(インセンティブ型介護報酬の実装モデルの開発)に着手することとなっていたが,厚生労働省からの要介護認定情報・介護レセプト等情報の提供が遅れたことから,第1段階(要介護認定情報・介護レセプト等情報の提供の解析と自立支援型介護の効果の推定)を2021年度末まで延長して実施することとする.これに伴い,第2段階の開始が2022年度となるが,第2段階の研究は既存研究をベースにしており,可能な限り第1段階と並行して実施することで,当初計画の3年間で終了するものとする. また,自立支援型介護に取り組む介護事業者の調査は,新型コロナウイルス蔓延状況等を考慮しつつ,リモートによるヒアリング実施も視野に入れて,2021年度に実施可能となるよう調整を行うこととする.
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次年度使用額が生じた理由 |
要介護認定情報・介護レセプト等情報の保管および解析作業実施は,厚生労働省の求めるセキュリティ基準を満たす神奈川県立保健福祉大学の施設内で実施することとなっており,2020年度に現地への複数回の出張を計画し,旅費を計上していたところ,厚生労働省からの情報提供が遅れたことにより当初計画どおりの出張を行わなかったため,次年度使用額が生じた.また,山形県内の介護事業者の調査を計画していたが,新型コロナウイルス蔓延により現地調査を中止したことから,旅費並びに謝金,その他について次年度使用額が生じた. 2020年度末に情報提供を受けたことから,2021年度は当初計画以上に神奈川県立保健福祉大学内での作業を行うとともに,山形県内の介護事業者への調査を実施する予定であり,2021年度請求額と合わせて使用する計画である.
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