研究課題
我々は、科学的知見に基づくヒトノロウイルスの感染症対策に役立てるために、全国の20の小児科医と阪南市民病院の田中智之 医師(堺市衛生研究所 元所長)と協力して国内で流行したヒトノロウイルスの全ゲノム情報の収集と解析の実施を試みる。解析情報には、流行株の性質を規定する全ゲノムの配列情報に加えて、流行株の遺伝的特徴、蛋白質の構造と機能の特徴、自然界での経時変化の特徴などが含まれる。日本で流行するヒトノロウイルス全長ゲノムを包括的に解析し、流行株の(1)種類、分布、動態、(2)特異的変異、(3) 蛋白質構造の特徴、(4)流行の発生機序、(5)遺伝子型と病原性についての関連性を明らかにする。初年度の成果は、 (i) 大阪府において、小児における定点把握感染症である感染性胃腸炎について、過去5年 2016年から2020年までの過去の平均定点当たり報告数は、2016年: 7.15±4.05、2017年: 5.11±1.74、2018年: 5.32±1.90、2019年: 5.36±1.84、2020年: 2.29±1.26であり、2020年は非常に少ない報告数で推移していた。これは、新型コロナウイルス感染症による行動変容、マスク着用や手洗いの徹底などの感染予防対策の徹底、受診抑制のためであると考えられる。(ii) 全国の20箇所の協力医療機関に検体供与を依頼したが、上記理由で、感染性胃腸炎の検体が得られなかった。ただし、3箇所の協力医療機関より、2019年に感染性胃腸炎と診断された検体を17検体、供与を受けた。(iii) 2020年度に、全長ゲノム解析で使用する次世代シークエンサー(イルミナ社 iSeq100)での解析システムを整備した。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症による行動変容、マスク着用や手洗いの徹底などの感染予防対策の徹底、受診抑制のため、非常に少ない報告数で推移しており、十分な検体数が得られなかった。
2年度目は、協力医療機関数を拡大し、検体供与の依頼を進める。得られた検体については、次世代シークエンサーを用いた塩基配列の収集する。日本で流行するヒトノロウイルス全長ゲノムを包括的に解析し、流行株の(1)種類、分布、動態、(2)特異的変異、(3) 蛋白質構造の特徴、を抽出し、流行株の特徴を解析する。
協力医療機関より、感染性胃腸炎と診断された検体の供与が少なく、次世代シークエンサーで解析できなかったため。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
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