研究課題
アストロウイルスの好発年齢は主に3歳以下の乳幼児で、感染性胃腸炎を引き起こすが、検出頻度は約 1~2%と言われている。症状が、比較的に軽症で終わることが多いため、医療機関に受診機会が少ないためと考えられる。しかし、保育園や小学校で、集団発生事例が発生しているため、注意が必要である。今回、医療機関で、2018年に感染性胃腸炎と診断された小児8例を対象に、次世代シークエンサーを用いて、アストロウイルスの全長ゲノム解析を試みた。糞便試料由来のウイルスRNAよりcDNAを合成後、Nextera XT DNA Library Preparation Kitで、Library DNAを精製した。iSeq100(イルミナ社)で塩基配列情報を収集後、CLC workbenchで、de novo assembly、Map reads to contigsで、解析した。de novo assembly により、アストロウイルスの断片配列(3,000 bp以上)が5配列を得た。Map reads to contigs では、遺伝子型が不明であるため、様々な遺伝子型(1型~8型、MLB1型、MLB2型)の参照配列(MN43306.1、FJ755403.1、HQ398856.2、L23513.1、KF211475.1、MN433703.1、Z25771.1、KF039911.1、MZ603079.1、KF039912.1、MF684776.1、MT906857.1 、GQ901902.2、MK059955.1、MK059956.1、AF260508.1、NC_001943.1、LC064152.1、NC_016155.1)をそれぞれ、参照配列にし、解析した。de novo assembly、Map reads to contigsから得られた候補配列から、GENETYXソフトウェアを用いて、nearly full length (6,752 bps)の配列を得た。MEGAソフトウェアを用いて、上記の参照配列とともに、nearly full length、そして、ORFごと(ORF1a、ORF1b、ORF2)に、最尤法による系統樹解析をおこなった。ORF1a、ORF1b、ORF2はアストロウイルス 遺伝子型3の参照配列に、近縁性が高かった。上田らの報告では、2018-2022年において、本邦では、1型、MLB1、8型が多く検出されている。今回、遺伝子型3の全長配列が明らかとなり、貴重な症例であった、
3: やや遅れている
1) アストロウイルス感染症は、症状が軽いため、医療機関における探知率は1-2%と低いため、臨床検体が収集できず、過去、2018年に収集した検体を用いて解析した。2) 長期冷凍保存していた臨床検体であったため、ウイルスRNAの収量が少なく、全長ゲノム解析ができた検体が少なかった。3) コロナ禍後、国内で流行しているアストロウイルスの遺伝子型が捕捉できていない。
2023年05月08日より、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の取り扱いが変更になり、「行動緩和」しつつあり、感染症の報告数は、コロナ禍前の状況に戻ると見込まれる。(I)4検体は、アストロウイルスの部分配列が明らかとなったため、アストロウイルスによる感染性胃腸炎が高い。しかし、ウイルスRNAの濃度が低いため、次世代シークエンサーの解析で、全長ゲノム解析は難しかった。これら4検体については、ウイルスRNAを元にcDNAを合成し、GenomiPhi Amplification kitを用いて、核酸増幅後、次世代シークエンサーで解析を試みる。(II) 臨床経過、血清生化学検査データを医療機関に尋ねる。(III) ノロウイルスによる感染性胃腸炎の検体を収集する。
アストロウイルス感染症は、症状が軽いため、医療機関における探知率は1-2%と低いため、臨床検体が収集できなかった。また、試薬については、事前に購入していたものが、使用できたため、新規に購入する必要がなかった。
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