研究課題/領域番号 |
20K10454
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
宮山 貴光 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (20620397)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 銀 / オートファジー / リソソーム / 肺がん / Rubicon |
研究実績の概要 |
オートファジーのネガティブレギュレーターである Rubiconの発現が抑制された条件において、細胞死やTFEB、LC3B-IIの発現影響についての検証報告はない。そこでRubicon特異的なsiRNAを2種類作製し、細胞死の評価を改変型のMTTアッセイで行った。TFEBとLC3B-IIの発現をWestern blottingとQuantitative real-time PCRで評価した。 Rubicon siRNAを処理したA549細胞において、2種類のsiRNAはともにRubiconの発現をタンパク質およびmRNAレベルで90%抑制した。MTTアッセイの結果、Rubiconノックダウン条件下で50 μg Ag/mlの銀ナノ粒子を24時間処理しても細胞死の増減に変化は認めなかった。TFEBとLC3B-IIの発現レベルはRubiconノックダウン条件下で50 μg Ag/mlの銀ナノ粒子を24時間処理しても、銀ナノ粒子単独処理の条件で認められた各因子の発現に対する更なる増減を認めなかった。 以上の結果から、銀ナノ粒子の直接的なリソソームの機能破綻が生じたA549細胞では、Rubiconの発現が低下していても、細胞死や各因子の発現影響に寄与しないと考えられた。これまでの先行研究からRubiconは、リソソームとオートファゴソームの融合に重要な役割を果たすものと想定されており、銀ナノ粒子の細胞死誘導のターゲットはRubiconが機能する膜融合ではなく、さらに上流のリソソームの機能破綻にあることが想定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、2020年度より続いていた新型コロナウイルス感染症規制の緩和により、連携する他の研究施設への訪問制限が解除された。また、一部の試薬や研究資材の納入遅れ等も解消された。学会参加においては、現地開催とオンライン開催のハイブリッド型は今なお主流ではあるが、現地参加する研究者人口も新型コロナウイルス感染症流行前に戻りつつあり、学会参加者同士の活発な議論や意見交換の機会に恵まれた。
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今後の研究の推進方策 |
近年、相次いで報告されている小胞体ストレス/オートファジーの連携機構と銀ナノ粒子の細胞死との関連性が想定されるが、本機構へのRubiconの寄与は不明のままである。小胞体ストレス応答の因子がオートファジーを調節すること(Arch Toxicol 2017, Clinical Science, 2020)がそれぞれ報告されていることから、次年度以降は、上述の個々の先行研究と本実験で得られた検証結果を含めて研究報告の充実をはかっていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、2020年度より続いていた新型コロナウイルス感染症の規制解除により、遂行できなかった連携研究機関への施設訪問、本来予定されていた学会・研究会への参加が予定どおり行うことができるようになった。同時に、生じている個々の事象の検証や相次いで報告されている論文や学会報告から、あらためて再度の検証や追加の報告が必要と判断し、再延長の判断に至った。
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