研究課題/領域番号 |
20K10699
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
中原 るり子 共立女子大学, 看護学部, 教授 (90408766)
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研究分担者 |
尾立 篤子 東邦大学, 健康科学部, 教授 (50736973)
櫻井 美奈 共立女子大学, 看護学部, 准教授 (90363845)
中村 昌子 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, その他, 教授 (80528894)
山住 康恵 共立女子大学, 看護学部, 准教授 (30553052)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | HICS / 災害 / 危機管理 |
研究実績の概要 |
2021年度の目標は、災害時の活動をコントロールし指揮するための管理システムHICS(Hospital Incident Command System )を調査し、日本の病院に沿う内容に修正することであった。 1990年から2017年までの系統的レビューによれば、HICSの長所は災害時における病院の回復力を高め、病院をエンパワーメントし、インシデントの管理と死亡者数の削減を果たし、平時や緊急時に押さえるべき要点を示すことができる点にあると報告されている。その一方で、このシステムの短所は、軍事的および階層的構造で使用するために開発されたシステムであるため、病院で運用するには限界があるという指摘もあった。また、システムを運用する際にかかるコストの高さも問題として指摘されていた。 このシステムの有効性を高める要因としては、①管理者がシステムの機能と原則を理解していること、②スタッフがシステムを理解できるようにトレーニングされていること、③管理者がこのシステムをスタッフのニーズに合わせて修正して実施していること、④経済上と管理上の障害を排除すること、⑤システムの強みと弱みを理解した経験豊富で有能で資格のあるマネージャーを任命することであった。 有効性を低下させる要因としては、①システムを運用している間に起こる意見の対立、②このシステムと病院の管理構造がマッチしないこと、③システムの評価方法の欠如、④危機管理のための組織文化の欠如、⑤このシステムの必要性の欠如、⑥組織のトップおよび管理者からの支援やコミットメントの欠如、⑦資格のある管理者の不足、⑧管理者による平時の活動への関心の欠如、⑨共通の管理言語の理解不足、⑩システム実装に対する上級管理職のコミットメントの不足などがであった。 日本におけるHICSを効率的に行うためには、これらの要素を意識することが重要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍で協力病院が混乱し、研究協力の余力がなくなっていること。研究者も所属する大学において、コロナ禍への対応を余儀なくされ、研究時間の確保が難しかったことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍もやや落ち着き、研究協力が得やすい状況になりつつある。今回の新型コロナウイルス感染症の急拡大という体験から危機管理体制に関する関心も高まってきた。 新たな病院における危機管理の方法として、HICSが日本の医療現場でも導入できそうか、導入に際しての課題は何かといった点について、病院関係者へのインタビューを行える状況に変化してきた。今年度は協力を予定していた病院だけでなく、災害拠点病院の関係者に調査を実施し、実施可能で効果的な研修プログラムを開発する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は新型コロナウイルス感染症の拡大で協力病院が対応に追われ、研究協力への余力がなかった。調査費用が執行できず、今年度に回すことになった。また、海外での研修や専門家の招聘にかかる必要も入国制限等に理由により執行できなかった。今年度、入国制限が緩和された場合には、実施を検討していきたい。
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