研究課題/領域番号 |
20K11111
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
大木 幸子 杏林大学, 保健学部, 教授 (50453519)
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研究分担者 |
藤井 広美 杏林大学, 保健学部, 准教授 (10336844)
高城 智圭 同志社女子大学, 看護学部, 教授 (20458962)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 児童虐待予防 / エンゲージメント / ケアの倫理 / 信頼関係の構築 / 保健師 |
研究実績の概要 |
研究内容:児童虐待リスクのある家族への支援において信頼関係を構築しながら支援を展開するための支援技術を明確化するため、以下の2点に取り組んだ。①子育てに関する保健師との継続的相談関係を有する親のインタビューデータから親と保健師の信頼関係構築に至った保健師の関わりの抽出、②親と保健師の信頼関係構築に至った事例への保健師の支援に関する技術(行為と意図)を、保健師のインタビューから抽出する。 結果:保健師へのインタビューについては、データ収集および分析の途中である。 親へのインタビューデータの分析の結果、信頼関係構築の要素は、13カテゴリーと37サブカテゴリーが抽出され、カテゴリーは4つの要素区分にわけられた。信頼関係構築のための〔Ⅰ前駆要素〕は、カテゴリー「①知識・技術・経験を持つ専門職への信頼」、「②保健師の素顔が伝わる安心感」、「③担当制による継続相談」で構成された。〔Ⅱ中核要素〕は、「④自分へのフォーカス」、「⑤まなざしの実感」、「⑥受援の肯定」、〔Ⅲ支援展開要素〕は、「⑦家族の多様性や個別性を踏まえた相談対応」、「⑧肯定的で双方向的な相談」、「⑨生活の場での相談」、「⑩SOSに即応した具体的な助け」、「⑪サポートネットワーク形成の実感」であった。〔Ⅳ強化要素〕は、「⑫気軽にいつでも相談できる存在」、「⑬行政組織への信頼」から構成された要素区分〔Ⅰ〕〔Ⅱ〕は、〔Ⅲ〕〔Ⅳ〕の基盤となり、〔Ⅱ〕〔Ⅲ〕〔Ⅳ〕は相互に関連しつつ、信頼関係の構築に直接影響していた。 子育てに困難を感じながらも支援を求めることが難しい母親の「声にならない援助希求」を捉え信頼関係を構築するためには、まず母に注目し、母の声を聴こうとする保健師の姿勢と、保健師からの繰り返しの声かけや継続的働きかけをとおした「まなざし」を伝えることが、重要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度である2019年度、2年目である2020年度は、covid-19の流行の影響を受けて教育へのエフォートが大きくなり、研究にさけるエフォードが大きく制約を受けたこと、対面のインタビュー調査が感染リスクから制限されたことから遅れが生じた。さらに2023年度は、研究者の環境の変化から、全体の進行が遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、以下の2点に取り組む予定である。 1.虐待予防に着目した事例への支援経験をもつ保健師に対し、親からのインタビュー結果を提示しながら、児童虐待予防に関わる保健師の支援の意図および行為についてインタビューを行う。 2.それらの保健師からの支援内容を元に、保健師を対象とした児童虐待予防をテーマとした支援事例に関するケースメソッドプログラムを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響をうけ、初年度より研究の進行が遅れている。そのため、基礎調査から教育プログラムの開発という研究プロセスにおける教育プログラムの開発が、当初の計画通り進んでいない結果となった。そのため、教育プログラムの開発に予定していた予算の多くが未使用となってしまった。 今年度、基礎調査の公表と合わせ、教育プログラムの試行を行い、使用する予定である。
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