研究課題/領域番号 |
20K11142
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研究機関 | 豊橋創造大学 |
研究代表者 |
蒔田 寛子 豊橋創造大学, 保健医療学部, 教授 (10550254)
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研究分担者 |
川村 佐和子 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 教授 (30186142)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 救急搬送 / 在宅高齢者 / リスクマネジメント / 多職種連携 |
研究実績の概要 |
超高齢社会を背景に、多職種連携による支援システムが構築されつつある。一方で、在宅高齢者の救急搬送は増加傾向にあり、緊急度が低いものを含むことから、救急車の適正利用の点で深刻な問題である。しかし、有効な解決策はなく、救急搬送患者への支援システムの構築は進んでいない。そのため本研究では、救急車の非適正利用をリスクと考え、解決策として「救急車を利用する在宅高齢者へのリスクマネジメントモデル」を開発する。2020年度は、救急車を利用する高齢者のニーズと多職種の支援内容を把握し、高齢者のニーズをふまえたリスク軽減のための支援(影響因子)を抽出することを目的に研究に取り組んだ。救急車を利用していたが、利用しなくなった在宅高齢者とその支援者(医師、救急隊員、訪問看護師等)を研究対象者とした。インタビューガイドに基づき、半構成的面接を行いデータ収集し、質的記述的に分析した。 在宅高齢者2名、支援者4名からデータを収集した。救急車利用ニーズのカテゴリは在宅高齢者では【どうしようもない】【不安でたまらない】であった。支援者が考える救急車利用ニーズのカテゴリは、【対処困難】【まず病院】【症状悪化】であった。救急車を呼ばない理由のカテゴリは、在宅高齢者では【日常生活支援で安心】【家族が対処】【急変を覚悟】であった。支援者が考える救急車を呼ばない理由のカテゴリは、【覚悟を決める】【具体的に対処】【療養生活の安心感】【日常生活が安定】【療養者を中心に連携】であった。在宅高齢者は、症状変化への不安が大きく、自分では対処困難な状況であると救急車を呼んでおり、支援者も同様と認識していた。しかし、本人・家族が覚悟を決め、具体的な支援を受けて日常生活が安定していることで、救急車を呼ばなくなっていた。支援者は本人・家族が覚悟を決め、日常生活が送れるよう症状変化への具体的な対処を指導し連携する必要があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、研究Ⅰ(インタビュー調査)を実施し、在宅高齢者の救急車利用への影響因子、支援者の支援内容と在宅高齢者の救急車利用への有効な支援(影響因子となる支援)を明らかにする予定であった。質的記述的研究としており、救急車を頻繁に利用していたが、利用しなくなった在宅高齢者10名程度とその支援者を研究対象者にインタビュー調査を実施し、データ収集する予定であった。しかし、COVID-19感染拡大により、病院も在宅も医療現場は大変忙しく、感染予防の必要から研究対象者の確保ができなかった。予定通りにインタビューでのデータ収集が進んでおらず、2021年4月現在、3名の在宅高齢者とその支援者5名のデータのみである。 とりあえずデータ分析が進んだ結果を整理したが、研究Ⅰのデータが十分ではなく、在宅高齢者の救急車利用への影響因子、支援者の支援内容と在宅高齢者の救急車利用への有効な支援(影響因子となる支援)が十分に明らかになったとは言えない。2021年度は研究Ⅱ(デルファイ法による質問紙調査)を実施する予定であったが、在宅高齢者が救急車を利用するリスクへの影響因子を質問項目として抽出できていないため、質問紙調査を始めることができない。
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今後の研究の推進方策 |
研究Ⅰ(インタビュー調査)を継続し、在宅高齢者が救急車を利用するリスクへの影響因子を質問項目として抽出できるよう分析を進める予定である。COVID-19感染拡大が収束できれば、インタビュー調査対象者の確保も進むと思われる。研究対象となる在宅高齢者を紹介頂けるよう、引き続き訪問看護ステーション管理者には依頼していく。 研究Ⅰが進み、質問項目を抽出することができれば、研究Ⅱに取り組む予定である。研究Ⅱでは、支援者を対象にデルファイ法による質問紙調査を実施し、意見の一致率の高い影響因子を絞り抽出する。インターネットを利用し無作為に質問紙を送付する事業所(病院、消防所、訪問看護ステーション等)を決定する。デルファイ法による調査は3回行い、1回目の調査は1000事業所に質問紙を郵送する。同意率は推奨される範囲の51~70%(Polit&Beck,2004)を参考に、得られる分析結果をふまえ、合意の基準として決定する。今後は、インタビュー調査により質問項目を抽出できるよう質的な分析を進めるとともに、インターネットを利用し無作為に質問紙を送付する事業所(病院、消防所、訪問看護ステーション等)の一覧を作成するなど、質問紙調査の準備を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、研究Ⅰとして、在宅高齢者の救急車利用への影響因子、支援者の支援内容と、在宅高齢者の救急車利用への有効な支援(影響因子となる支援)について明らかにすることを目的とし取り組んだ。そのために、研究対象者を、救急車を利用していたが、利用しなくなった在宅高齢者とその支援者(病院救急外来の医師と看護師、救急隊員、主治医、訪問看護師、ケアマネジャー等)とし、高齢者10名とその支援者複数名にインタビュー調査を実施する予定であった。しかし、COVID-19感染拡大によりインタビュー調査、データ分析が進んでいない。インタビュー調査協力の研究対象者への謝金や調査資料収集旅費、研究対象者への連絡等の通信費、インタビューデータの音声反訳データ処理委託費を予定よりも使用していない。また感染拡大のため対面の会議もほとんどしておらず会議費も使用していない。研究が予定通り進めることができなかったため、次年度使用額が生じている。
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