剣道は技(打突)が非常に素早いため,経験がない者には打突の有効性の判断が難しい.そこで本研究は,剣道の有効打突の判断における剣道熟練者の視線行動(眼球運動)の特徴を明らかにすることを目的とした.剣道経験者と未経験者ともに打突前0.9秒から0.6秒までの局面では打突者の竹刀に,打突時には打突部位に視線を向ける傾向は共通していた.しかし,打突前0.3秒から打突直前まででは,経験者は視線の置き場を打突部位へ予測的に切り替える傾向があることが明らかになった.このことから,経験者の優れた判断は,打突前に打突部位へ視線を向けるという経験に依存した視線行動に起因していることが示唆された.
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