研究課題/領域番号 |
20K11565
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研究機関 | 東京家政学院大学 |
研究代表者 |
海野 知紀 東京家政学院大学, 人間栄養学部, 教授 (90439753)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カテキン / 尿毒素 / 腸内細菌 / クレゾール / フェノール / ポリフェノール |
研究実績の概要 |
フェノール,p-クレゾールは腸内細菌が産生する尿毒素の一種であり,慢性腎臓病の憎悪因子として理解されている。一方で,食事因子であるポリフェノール化合物は,その一部が大腸に到達し,大腸に生息している腸内細菌叢を改変させることが報告されている。本研究は,エピガロカテキンガレート(EGCG)の摂取が腸内細菌叢の改変をもたらすことで,尿中のフェノール,p-クレゾール排出量を指標とした影響について明らかにすることを目的とした。 令和2年度は,フェノール,p-クレゾールを高感度に,かつ同時分析を可能とする測定条件を検討した。尿からの精製・回収は,逆相用のポリマー系充填剤を搭載した固相抽出カートリッジを用いることで,高い回収率を達成することができた。また,電気化学検出器を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定条件を確立し,短時間で感度良く検出することができた。これらは肝臓等において抱合反応を受け,グルクロン酸抱合型,硫酸抱合型として尿中に排出されることから,β-グルクロニダーゼ,スルファターゼを用いた脱抱合処理を行い,酵素処理の有無によって抱合型と遊離型の両方を定量することが可能となった。 次に,ICRマウスにEGCGを混合させた食餌を与え,経日的に尿を回収し,上述の方法にて尿中フェノール,p-クレゾールを測定した。その結果,フェノールよりp-クレゾールの尿中排出量が多いことを確認し,0.3%(w/w)EGCGを配合した場合では,コントロール群と比較して尿中へのp-クレゾールの排出量が有意に低下することが明らかとなった。一方で,この配合量では摂餌量の低減が観察されたため,今後はEGCGの配合量依存的な影響を確認する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は,固相抽出法を組み合わせ、尿中のフェノール,p-クレゾールを高速液体クロマトグラフィーを用いて測定する条件を確立し,次に,実験動物を用いてEGCGの摂取試験を行った。その結果,EGCGの食餌投与によって有意な尿中p-クレゾールの低下を認め,EGCGによる腸内細菌叢への作用を介した効果を示唆するものであったが,腸内細菌叢の変化を踏まえた考察には至らなかった。また,EGCGの配合量によっては摂餌量に影響が出ることが確認されたため,EGCGによる直接的な関与を説明するためには,この点を解決することが必要とされた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度以降は,令和2年度に得られた結果・課題をもとに,尿中フェノール,p-クレゾール排泄量を指標として,EGCGの配合量依存的な効果を明らかにするとともに、腸内細菌叢との関連性に関する考察を加速させる。さらにその結果を踏まえ,糖尿病モデル動物などを用いて疾患予防との関連性からも評価を加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の動物実験において,被験物質を与えたマウスの摂餌量が低下することを認めた。尿毒素の尿中排泄量が低下したことについて,被験物質の直接的な効果であると結論づけるためには,被験物質の配合量依存的な作用を見極める必要が生じた。したがって,当該年度に計上していた腸内細菌叢の解析のための経費(外部の分析機関に委託することを予定)については,次年度に実施する実験の結果をもって執行することとした。
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