研究課題/領域番号 |
20K11692
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 佑輔 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (40581591)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 組合せ最適化 / アルゴリズム / 多項式時間 |
研究実績の概要 |
「複数の多面体の利用」の方向の高度化に関して,Szabo (2008) や Dudycz & Paluch (2018) で提案されている多面体的アルゴリズムを繰り返し適用する手法の理解を深め,拡張を試みた.Szabo (2008) は構造物設計を動機として生じたRecski の予想を解決するために,線形マトロイドパリティ問題を繰り返し解く多項式時間アルゴリズムを提案しており,Dudycz & Paluch (2018) は最適一般化マッチング問題に対して,重み付きマッチング問題を繰り返し解くタイプのアルゴリズムを提案している.本年度の研究では,これらの手法を組み合わせることでは,Recski の予想を重み付き版に拡張した問題が直ちに解決できないという否定的な結果を得た.また,多面体的手法が有効な離散構造であるマトロイドを用いてモデル化されたある種の市場において,よい性質を持つ均衡価格が常に存在することを示し,その結果は国際会議 ISAAC に採択された.多くの場合,市場の均衡を扱う際にはアイテムの価格付けとアイテムの割当の組を考えるのに対して,本研究の設定では価格付けのみで市場をコントロールできる十分条件を与えている.証明には,交換可能性グラフや weight splitting と呼ばれるマトロイド上の最適化問題で使われる手法を用いており,技術的にも興味深い結果であると言える.それ以外にも,ある種の条件をみたす全域木の遷移問題や,ある種の制約論理の実行可能解の遷移問題に対する効率的なアルゴリズムを与え,それらの結果はアルゴリズム分野の国際会議 ESA, IPEC に採択された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Szabo (2008) で扱っていた問題を重み付き版に拡張した問題は直ちに解決できないことがわかり,否定的な結果ではあるが重要な進捗であると言える.それ以外にも,研究成果がアルゴリズム分野の主要な国際会議 ISAAC, ESA, IPEC に採択されており,全体としては十分な成果が出ていると言える.一方で,コロナの影響で海外渡航が難しいことから,世界的にトップレベルの研究者との情報交換や議論は想定していたよりもできていない.
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今後の研究の推進方策 |
「複数の多面体の利用」の方向の高度化に関しては想定していた方針では,Szabo (2008) で扱っていた問題を重み付き版の解決が難しいことが分かったため,新たな手法の開発を検討する.「拡張定式化の利用」の方向の高度化に関しては,2マッチング問題に短い閉路を含まないという制約を追加した制約付き2マッチング問題や,最短パス問題に使う辺数の制約を加えた制約付きs-t最短パス問題などに取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響もあり,国内海外ともに出張が一切できなかったため,旅費として想定していた金額が次年度使用額となった.今年度コロナが落ち着き次第,海外および国内の出張旅費として使用する予定である.
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