研究課題/領域番号 |
20K11692
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 佑輔 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (40581591)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 組合せ最適化 / アルゴリズム / 多項式時間 |
研究実績の概要 |
本研究計画の目的は組合せ最適化における多面体的アルゴリズムの高度化にある.組合せ最適化における多面体的アプローチが成功している代表的な例として,連結度制約付きのグラフ向き付け問題が挙げられる.これは,1960年の Nash-Williams の定理に端を発するグラフ理論における古典的な話題であると同時に,劣モジュラ流問題の特殊ケースとして組合せ最適化分野においても重要性が認識されている問題である.本年度の研究では,連結度制約を保ちながら向き付けの辺の向きを1本ずつ変更していく,「グラフ向き付けの遷移」に関する成果を得た.我々の主結果は,「2k辺連結無向グラフの任意の向き付けに対して,うまく辺の向きを1本ずつ変更していくことで辺連結度を単調に増加させ,最終的にk辺連結向き付けを得ることができる」というものである.これは,古典的な Nash-Williams の定理を強めた結果であり,k辺連結向き付けのフリップ・グラフの連結性を議論する際にも有用である.本研究成果は離散アルゴリズムのトップ会議である ACM-SIAM Symposium on Discrete Algorithms (SODA2022) に採択された.それ以外にも,制約付き全域木の遷移問題や,妬みのないマッチングの更新に関するアルゴリズムの研究も行なっており,それらの成果はそれぞれ国際会議STACS, AAAIに採択された.また,2020年度から行なっているある種の市場における均衡価格に関する研究成果は SIAM Journal on Discrete Mathematics誌に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では,多面体的アプローチが有用な代表例であるグラフの向き付け問題に対して新たな成果を得ており,研究計画はおおむねに順調に進展していると評価できる.また,離散アルゴリズムのトップ会議である SODA2022 に論文が採択されたことは,研究成果の客観的な国際的評価の高さを示すものであるといえる.ただし,コロナの影響で海外渡航が難しいことから,世界的にトップレベルの研究者との情報交換や議論は想定していたよりもできていない.
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今後の研究の推進方策 |
グラフの向き付け問題に対して得られた本年度の結果を,劣モジュラ流問題や多面体の文脈で理解しなおすことにより,より一般的な形に拡張することを目指す.これは,多面体的アプローチを組合せ遷移との融合により高度化することに繋がると考えられる.また,「複数の多面体の利用」の方向の高度化に関して,Dudycz & Paluch (2018) によって提案された最適一般化マッチング問題のアルゴリズムを再検討し,アルゴリズムの簡略化および抽象化を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響もあり,国内海外ともに出張がほとんどできなかったため,旅費として想定していた金額が未使用となった.今年度コロナが落ち着き次第,海外および国内の出張旅費として使用する予定である.
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