研究課題/領域番号 |
20K11692
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 佑輔 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (40581591)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 組合せ最適化 / アルゴリズム / 多項式時間 |
研究実績の概要 |
本研究計画は組合せ最適化における多面体的アルゴリズムの高度化を目的とするものであり,特に,「拡張定式化の利用」,「複数の多面体の利用」の2点に注目している.2022年度の主要な成果として,ある種の制約付き重み付き2マッチング問題に対する初の多項式時間アルゴリズムの設計が挙げられる.重み付き2マッチング問題は,多面体的アプローチを用いてアルゴリズムを設計することのできる組合せ最適化における古典的かつ重要な問題である.しかし,付加的な制約を課すと問題は急激に難しくなり,多項式時間アルゴリズムが知られていない問題が数多く存在している.本研究では,ある種の制約付き重み付き2マッチング問題に対して,指数本の制約式を持つ拡張定式化を用いて実行可能解全体を表現するという,今までにないアプローチを用いて多項式時間アルゴリズムを設計している.これはまさに当初目指していた通りの「拡張定式化を利用して多面体的アルゴリズムを高度化する成果」であると言える.この研究は前年度以前から継続して取り組んでいたものであり,2022年度に数理最適化の主要誌である Mathematical Programming誌に採録された. その他の重要な成果として,最短点素パス問題に対する多項式時間アルゴリズムの設計が挙げられる.最短路問題は多面体的に解釈でき,多項式時間で解ける組合せ最適化問題であるが,その拡張である最短点素パス問題は多項式時間アルゴリズムの存在が未解決である.本研究では,ある種の条件をみたす最短点素パス問題に対して,初の乱択多項式時間アルゴリズムを与えている.この成果は,アルゴリズム理論の主要国際会議である International Symposium on Algorithms and Computation (ISAAC) に採択された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では,ある種の組合せ最適化問題に対して,指数本の制約式を持つ拡張定式化を利用した多項式時間アルゴリズムを設計している.これは「拡張定式化を利用して多面体的アルゴリズムを高度化する成果」であると言え,研究計画はおおむね順調に進展していると評価できる.また,数理最適化の主要な論文誌である Mathematical Programming誌に論文が採録されたことは,研究成果の客観的な国際的評価の高さを示すものであるといえる.その他の成果も,理論計算機科学やオペレーションズリサーチの主要会議,主要論文誌に採録されており,研究成果は質,量ともに十分な水準にあると評価できる.ただし,コロナの影響もあり,海外での研究発表や,世界的にトップレベルの研究者との情報交換や議論の機会はは想定していたよりも少ない.
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度から引き続き,「複数の多面体の利用」の方向の高度化を目指して,Dudycz & Paluch (2018) によって提案された最適一般化マッチング問題のアルゴリズムを再検討し,アルゴリズムの簡略化および抽象化を行う.また,指数本の制約式を持つ拡張定式化を利用した多項式時間アルゴリズムを他の組合せ最適化問題に適用することを試み,「拡張定式化を利用した高度化」の適用範囲を拡大することを目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で当初予定していた海外渡航が遅れたため,残額が生じた.既に,2023年度前半に2回の海外渡航を予定しており,2022年度残額分はその費用として利用する予定である.
|