研究課題/領域番号 |
20K11926
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
神田 智子 大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (80434786)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヒューマンエージェントインタラクション / ヒューマンロボットインタラクション / HAI / HRI / 対話エージェント / 社会的対話ロボット / 接客 / 文化間比較 |
研究実績の概要 |
本研究では,多文化共生社会に適応可能なエージェントおよびロボットの非言語行動の設計における考慮点を提言することを目的とし,このために,1.人間同士のコミュニケーションにおける非言語行動の文化差をモデル化し,2.モデルに従って文化に特有な非言語行動をエージェントやロボットに実装し,3.人間 とエージェントおよびロボットのインタラクション評価実験を行う. 具体的には,視線行動と挨拶行動の2つの非言語行動および言語行動に着目し,1.日本人や欧米人に特有な対話中の視線行動/挨拶行動をモデル化し,2.それらの行動を対話エージェントおよび対話ロボットに実装し,3.対話インタラクション実験を行い,それぞれの視線/挨拶行動の文化差がもたらす,エージェントやロボットに対する印象や受容性に対する影響を検証する. 令和5年度は次の研究を実施した.A)令和4年度に実装した「面接・面談,および接客場面における1対1の対話時の表情,視線,姿勢のモデル化した対話エージェントとロボット」を改良し,視線や非言語行動の変化をより自然かつ分かりやすいものにした.B)改良した対話エージェントやロボットを用いて,対話エージェント,ロボットの視線行動および非言語行動の表出の度合を変化させ印象評価実験を実施した.C)Aのモデルを用いて,日常生活の4つの場面で接客サービスを行うロボットを想定した,人間との対話動画を作成した.動画を日本語,ドイツ語の二か国語で作成し,日本とオーストリアの2か国間で,サービスロボットの受容性の文化間比較を行う文化間印象比較実験を実施する準備を行った.D)研究成果の発表:研究成果を,学術論文2件(うち英語論文1件),国内会議1件で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は,令和4年度までにエージェントと対話ロボットに実装した視線モデルと非言語行動を,より自然かつ変化がわかりやすいように改良した.また,実験の実施において,令和4年度の実験結果,すなわち,「ロボットを用いてクラウドソーシングを利用した評価実験を行ったが,対面の対話と同じようなロボットの実体性や臨場感を伴う評価は困難であり,全ての実験条件において印象評価に有意差が見られなかった」点を解決すべく,動画実験の実施内容の再検討を行った.その結果,微細な表情や非言語行動のみを実験条件にするのではなく,4種の接客サービスの場面設定を行い,動画内のユーザとロボットの対話を含めた実験を実施するものとし,令和6年度の実験環境を整備した.
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は,面接および接客場面において,対話エージェントやロボットの視線行動と非言語行動の表出の度合いによる印象比較を 行うインタラクション評価実験を行う.さらに,4種の接客サービスの場面設定において,ユーザとロボットの対話を含めた動画を用い,ウィーン工科大学と連携して,日本とオーストリア間のサービスロボットの受容性比較実験を実施する.さらに,「多文化共生社会に適応可能なエージェントおよびロボットの非言語行動研究」の5年間の成果を,対話エージェントおよび対話ロボットの視線や非言語行動による印象変化,文化間の受容性比較の観点からまとめ,成果の発表を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度は,エージェントやロボットに実装する非言語行動の再検討,実験で想定するエージェントやロボットの使用環境の再検討等,より効果的な評価実験実施のための準備を中心に研究を実施した.また,国内の学会を中心に研究成果発表を行ったため,旅費として計上していた予算を消化することはできなかった. 残予算は,改良した対話エージェントとロボットを用いた印象評価実験の実施,および成果発表のための旅費に活用したい.
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