研究課題/領域番号 |
20K11983
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
持田 信治 流通科学大学, 商学部, 教授 (40412374)
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研究分担者 |
中島 智晴 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (20326276)
満行 泰河 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40741335)
橘 昌幸 広島国際大学, 保健医療学部, 教授 (70380491)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 3秒ルールインテリジェンス / ベイジアンネットワーク / 人工知能 / 行動判断のゆらぎ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は3秒ルールインテリジェンス実現に向けた知見と課題を得ることである。 3秒ルールインテリジェンスは、人の判断と行動は3秒単位の行動判断の揺らぎの中で行われているとの仮定に基づいて、人の行動判断を模擬する人工知能である。本研究の主たる目標は人の揺らぎの模擬であり、人の行動判断の背景にある揺らぎの模擬が可能になれば、環境状況が変化する中で、人との協働作業が可能な人工知能が実現する。3秒ルールインテリジェンスは、ベイジアンネットワークにより算出される行動選択確率と行動発現の敷居値により人の行動判断の背景にある揺らぎを模擬する。よって、本研究は医療現場での医療スタッフとの協働作業の実現を目指して、以下を実施目標としている。(1)人の判断と行動は3秒未来までの価値観で決まるとの仮定の検証を行う。(2)医療現場の状況に従って設定された条件付き確率テーブルを持つベイジアンネットワークを試作して、患者支援行動発現確率を得るための知見を得る。(3)WEB上に3秒ルールインテリジェンス試行システムを構築して、機能を評価する。そこで、2020年度は治療現場のヒヤリハット情報を収集して、医療スタッフの患者支援が発動される状況をベイジアンネットワークにより表現した。次に2021年度はベイジアンネットワークを2層にして、環境状況の変化に従って、エビデンスを自動設定する3秒ルールインテリジェンスの実現可能性を確認した。そして、2層のベイジアンネットワークを用いた3秒ルールインテリジェンスの実現可能性を大学紀要にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の研究は概ね計画通りに進捗している。具体的には、3秒ルールインテリジェンスの実現を目指して、これまでに以下を実施した。(1)治療現場でのヒヤリハット情報の収集。(2)人の行動の揺らぎのメカニズム解析(3)医療スタッフによる患者支援行動発現時の患者を取り巻く環境の遷移情報の収集と行動を左右する各要因に対する確率情報の収集(4)患者支援行動発現時のトリガ情報収集と行動発現の閾値の検討(5)3秒ルールインテリジェンスの実現に向けた2層ベイジアンモデルの試作。具体的には(1)については治療現場におけるヒヤリハット情報の収集を行い、引き続き、時系列的なヒヤリハット情報の収集を行っている。(2)については人の行動判断の揺らぎを引き起こす人の価値観の揺らぎに関する研究を進めており、2021年度に人の心理的価値観が形成されるメカニズムの研究について学会発表を行った、今後、本発表内容を本研究に適応する予定である。(3)と(4)については医療スタッフによる患者支援行動の発現を左右する要因の解析とベイジアンネットワークに設定する条件付き確率表を見直した。(5)については、ベイジアンネットワークへのエビデンスの自動設定を目指して2層のベイジアンネットワークを試作した。例えば、患者状態を算出するために、患者の蛇行状況、意識レベル、患者のパフォーマンスステータスと患者状態により構成されるベイジアンネットワークを更に設定して、エビデンス設定の自動化を目指して、試行を行い、エビデンスの自動設定の可能性を得た。そして本結果を大学紀要にまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は3秒ルールインテリジェンス実現に向けた知見と課題を得ることであり、人の行動判断の根底をなす、人の意思決定の揺らぎを模擬することが今後の課題である。本研究では、動的ベイジアンネットワークとはエビデンスを自動設定するベイジアンネットワークと定義しており、2022年度は人の意思決定の揺らぎを模擬する動的ベイジアンネットワークの実現に関する研究を進める。人の行動判断の敷居値は3秒間隔で揺らいでいるとの仮定に基づいて、3秒ルールインテリジェンスに行動選択確率を与えるベイジアンネットワークへの自動エビデンス設定と行動選択を行う閾値をリアルタイムに変更することを検討する。具体的には人の行動判断は環境の変化に伴い行動発現の閾値がリアルタイムに変化すると考え、環境の変化の自動観察を行い、敷居値のリアルタイム変更とエビデンスの自動設定の可能性を検討する。加えて、3秒ルールインテリジェンスを構成するベイジアンネットワーク中の条件付き確率テーブルの精度向上を行う。条件付き確率テーブルの精度向上は医療スタッフからのインシデントレポートの解析を進めることにより行う。3秒ルールインテリジェンス上に環境変化に対する動的な対応機能が実装できれば、人の判断と行動の揺らぎの実時間での模倣が可能となる。そして、人の判断と行動は3秒未来までの価値観で決まるとの仮説に基づく3秒ルールインテリジェンスの試作状況を論文にまとめて学会投稿を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ禍により、研究打ち合わせが制限を受けたため、3秒ルールインテリジェンス試行システムの試行に関する打ち合わせと評価が遅延して、次年度使用費用が生じた。しかし、医療従事者の協力により、基本的な機能の評価は進んでおり、研究の進捗に問題は無い。2022年度は研究分担者とのシステム評価方法に関する議論と評価を進め、費用消化が進む予定である。
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