現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、令和2年度中に、協力者との対面コミュニケーションを通じて高解像コネクトーム・データを入手する予定であったが、コロナ禍のためにこれを断念し、コネクトームのリバースエンジニアリングを方法論として構築・発展させることに注力した。令和3年度、協力者と対面で十分に打ち合わせた上で高解像コネクトーム・データをコンパイルし、それらから以下の特徴を持つマウス視覚野ネットワークを構築した:ノード数468;リンクは重みと方向を持ち、その総数は219,024;視覚野(以下の10個の区画で構成される:VISpor, VISli, VISpl, VISl, VISp, VISal, VISrl, VISa, VISpm, VISam)における各ノードの位置が所属区画で表現される。 MDMCにより、ネットワークから二つの遍在的コミュニティが抽出された。これらのコミュニティは、視覚野のゲートである一次野 (VISp) を中心として、ファジイに重なっている。一方のコミュニティは腹側に、他方のコミュニティは背側に偏る。霊長類の視覚野は、オブジェクト認識に関わる腹側経路とコンテクスト処理に関わる背側経路とに分かれていることが知られている。我々の結果は、マウス視覚野にも、霊長類視覚野と同様に、腹側・背側経路への機能分化があることを示唆する。 さらに、MDMCを用いてコミュニティの階層構造を導出した。下位層において、腹側および背側コミュニティから、それぞれ、腹側・背側間ブリッジおよび視覚野ゲートに重心を有する遍在的コミュニティが分化して現れた。なお、これらのコミュニティに対応する経路が実際のマウス視覚野に存在することが、神経科学実験から示唆されている(Wang, Gao & Burkhalter, 2011)。
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