本研究では、森林生態系への窒素流入にともなう相対的なリン利用性の低下により、競争力の劣るリグニン分解菌のリン制限が顕在化し、リグニン分解酵素活性が低下して土壌有機物分解が抑制されるという仮説を検証した。可給態リン濃度は、いずれの土壌でも窒素添加区の方が対照区よりも高値を示した。また窒素添加によりリグニン分解酵素活性が低下する土壌も存在したが、逆に活性が高まる土壌も見られた。このため、窒素添加によりリン利用性は低下しないものの、別の機序によりリグニン分解酵素活性が低下する土壌が存在することが示唆された。また全ての土壌で窒素添加によりリグニン分解酵素活性が低下するわけではないことが示された。
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