研究課題/領域番号 |
20K12154
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
仲江川 敏之 気象庁気象研究所, 応用気象研究部, 室長 (20282600)
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研究分担者 |
野坂 真也 気象庁気象研究所, 応用気象研究部, 研究官 (40751805)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 降水量 / パナマ / 地球温暖化 / 水資源量 / 生態環境 / 年最大降水量 / パナマ運河 |
研究実績の概要 |
本年度は、パナマ共和国全体を対象に、5km、2kmの空間解像度で、気候再現実験を実施した。用いたモデルは気象研で開発された地域気候モデルNHRCMである。将来予測実験も実施することから、気象研究所全球大気モデルによる現在気候実験から境界条件を取得した。 また、降水量気候値については、格子サイズが細かくなるにつれて、NHRCMの降水量バイアスが小さくなることが明らかとなった。 NHRCM02はパナマ全域で年降水量バイアスが小さく、パナマ全域での面積平均は最小である。空間水平解像度はバイアスやRMSE、空間相関を向上させる点で、非常に効果が高いことが示された。これらは、パナマの研究協力者と共に、査読付き論文として公開された。 更に、CMIP6 高解像度モデル相互比較実験HiResMIPに参加した気象研究所全球大気気候モデル、MRI-AGCMを用いた150年実験を解析し、パナマ域での平均降水量と年最大降水量の時系列変化を解析し、中米全体の変化傾向との比較を行った。平均降水量はさほどでもないが、パナマ程度の国土で平均しても年最大降水量は非常に大きな変動を持ち、有意な変化を見いだすことは難しい。今後は更に詳細な解析を進める予定である。 CMIP5のマルチモデルアンサンブルを用いて、パナマ運河域の水資源予測をパナマの研究者と行うために、モデルの流出量と蒸発量についてバイアス補正を行った。その結果、バイアス補正方法により、気候値は一致するものの、年々変動や極値は大きく異なることが示され、将来予測の不確実性を生み出す一因となることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度に実施予定であった地域気候モデルの現在気候再現性評価は計画通りに論文として出版された。また、全球気候モデルの150年連続実験の解析は解析を終え、共同研究者と議論を深める段階にまで達し、順調と言える。CMIP5マルチモデルによるパナマ運河の水資源予測は予定外であったが、共同研究が順調に進んだため、着手することができた。従って、全体として順調に進展していると言える。但し、コロナウイルス感染拡大のため、相互訪問による研究交流には支障があった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果ならびに、進捗状況を踏まえて、引き続き、パナマ域での将来気候下での降水予測を推進する。地域気候モデルによる時空間詳細な将来降雨予測を行う。また、熱帯で卓越する降水日周期の再現性を確認した後、将来変化を調べる。全球大気気候モデルを用いた予測では、これまでの結果を吟味し、論文として公開を目指す。また、2023年2月には、日本に共同研究者のパナマ人研究者を招へいし、国際ワークショップを開催する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大のため、パナマへの出張並びに国内出張ができなかったため、次年度使用額が発生した。この次年度使用額と翌年度分として請求した助成金と合わせて、海外・国内出張、ならびにストレージの整備として主に利用する計画である。
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