昨年度実施した、全球モデルによる将来気候予測を地域気候モデルNHRCMで力学的ダウンスケーリングした結果を解析した。一方向ネスティング法を適用し、5km格子、2km格子間隔でパナマ全域をカバーした。シミュレーション期間は、現在気候20世紀末20年、将来気候21世紀末20年間である。将来予測は、SSP5-8.5シナリオに基づく予測である。。現在の気候シミュレーションを、観測に基づくグリッド日降水量との比較を行い、モデルが十分な現在気候再現性を持つことを調査した。現在気候シミュレーションでは、コスタリカ国境の山地付近で降水量は過小評価されており、カリブ海側では過大評価されていることが明らかになった。将来気候下での降水量と現在気候のグリッド日降水量の比を比較すると、今世紀後半の降水量は過去の空間パターンとよく似ているが、カリブ海側で降水量が増加し、山地と太平洋側で降水量が減少することが示された。 また、昨年度から継続して解析している1950年から2100年までの全球モデル150年ラン実験の年最大日降水量の変化については、全球平均、熱帯アメリカ地域平均では、全球どの地点の地上気温とも年最大日降水量領域平均と相関が高いことが示された。一方、パナマ領域平均の年最大日降水量は熱帯地上・海上気温との相関が高いことが示された。即ち、この3つの地域については、対象量域が狭くなるほど、全球平均気温との相関関係は弱くなった。年最大日降水量と地上気温の長期トレンドを除去して、相関係数を調べると、熱帯アメリカ地域平均についても、熱帯地域の地上気温と相関が高いことが示された。この結果は、現在気候において、パナマ地域がエルニーニョ現象時に渇水傾向、ラニーニャ時に多雨傾向にある関係が、将来についても引き続き維持されることを示している。
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