研究課題/領域番号 |
20K12207
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
諸泉 利嗣 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (60230174)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土壌汚染 / NAPL / 誘電率 / 熱伝導率 / TDR / 層構造 / ランダム構造 |
研究実績の概要 |
本年度は,非水溶性液体であるNAPL(Nonaqueous Phase Liquid)で汚染された不飽和砂土を想定し,土壌中にNAPLと水が分離して存在する層構造の場合と分散状態で存在するランダム構造の2つの存在形態が誘電率と熱伝導率に与える影響について検討した.NAPLには,水よりも密度の小さいLNAPLとしてキャノーラ油を,密度の大きいDNAPLとしてHFE7100をそれぞれ用いた.誘電率の測定にはTDR法を,熱伝導率の測定には単一プローブ法を使用した.また,測定値と誘電率・熱伝導率モデルによる推定値を比較検討した.誘電率モデルにはMaxwell-De Loor model(MDモデル)とBirchak model(αモデル)を,熱伝導率モデルには直列モデルとBirchak model(αモデル)を使用した. その結果,不飽和4相系のTDR波形に関しては,層構造系では境界面が2つ存在しているため波形のピークが3つ生じる仮説を立てていたが,実験結果からは2つのピークしか見られなかった.これはLNAPL-空気間の誘電率の差が小さいことで,パルス信号の反射が起こらなかったことによると考えられる.ランダム構造系では,攪拌によって界面が破壊されているため,層構造と比べて2つ目のピークが緩やかになった.空気の含有率を変化させた場合の誘電率と熱伝導率に関しては,体積含水率の増加とともに誘電率及び熱伝導率はともに大きくなった.また,同じ体積含水率ではNAPLの含有率が大きいほどそれらの値は大きくなった.構造による値の違いに関しては,誘電率は層構造の方が,熱伝導率はランダム構造の方がそれぞれ大きくなった.誘電率・熱伝導率モデルの適用結果に関しては,誘電率についてはαモデルの方がMDモデルよりも実験値をよく再現できた.熱伝導率についてはαモデルが両構造ともに精度よく推定できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
砂土-水-LNAPL(またはDNAPL)の砂土-水-NAPPL-空気の不飽和4相系の場合については,当初の予定通り研究は順調に進んでいる.しかし,水の代わりに,汚染物質に水溶性化学物質を含む液体とNAPLを含む複合汚染を想定した実験を終えることができなかった.したがって,現在までの進捗状況は「(3)やや遅れている。」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度実施できなかった,水の代わりに汚染物質に水溶性化学物質を含む液体とNAPLを含む複合汚染を想定した実験を,空気を含む不飽和4相系土壌について実施する.また,当初計画通り2022年度は,溶液とNAPLを土壌カラムに浸透させ,2020年度及び2021年度の結果より求めたNAPL含有量と誘電率,NAPL含有量と熱伝導率の各推定式を用いて土壌カラム中を流動する場合の汚染物質含有量のモニタリング実験を行い,本研究で構築した土壌中の汚染度モニタリングシステムを現地に適用する際の手順,留意点,課題などを検討し,実用化をはかる.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験当初予定より若干遅れたことにより必要な消耗品購入を見合わせたこと,および予定していた学会発表が中止になったため旅費等を使用する必要がなくなったため,次年度使用額が生じた.実験試料等に必要な消耗品の購入と学会参加費に使用する計画である.
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