研究課題/領域番号 |
20K12305
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
篠木 幹子 中央大学, 総合政策学部, 教授 (20398332)
|
研究分担者 |
阿部 晃士 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (50305314)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 高齢化社会 / ごみ分別 / 高齢者ごみ出し支援 |
研究実績の概要 |
本年度は、以下の点に関して検討を行った。第1に、先行研究の知見をまとめ、現状を把握した。第2に、政令指定都市における制度の状況、ごみ収集量、資源化率、ごみの収集方法、高齢化率等を調べてデータセットを作成し、分析を行った。第3に、日本の1718全市町村における高齢者ごみ出し支援制度のデータセットを作成している(現在も作成中)。 先行研究からは、(1)現在、ごみ出しに困難を抱える高齢者が多くいると考えている自治体が全国で半数となっており、(2)今後、高齢化によってごみ出しが困難な住民が増えると8割の自治体が考えていること、また、(3)2019年時点でごみ出しを行っている自治体は全体の25%であり、(4)開始時期は2014年から2018年が最も多いが、1990年代から高齢者のごみ出し支援制度によって支援を行っている自治体もあること、さらに、(5)高齢者向けごみ出し支援を始めたきっかけは住民の要望が多いことがわかった。 また、自ら作成した政令指定都市に関するデータセットの分析を行ったところ、高齢者のごみ出し支援制度を設置しているのは75%の都市であり、2010年より前に設置した都市が50%、2010年以降に制度を設置した都市が50%となっていることがわかった。相対的に支援制度の設置年が早い(2010年よりも前)都市と、設置が遅い年(2010年以降)で比較を行ったところ、設置年の早い都市のほうが現在、一人一日あたりのごみの量が少なく、約130グラムの差がみられる。さらに、設置年が早い都市は、高齢化率の平均が17%、設置年が遅い都市では高齢化率の平均が25%の時に制度を設置していることがわかった(設置年が早いか遅いかで、現時点での高齢化率には違いはみられない)。社会の変動を見据え、早い時期から高齢化対策を行った都市は、対策に一定の効果がみられると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、本年度は多くの自治体に対して聴き取り調査を実する予定であったが、社会状況的にそれが難しかったため方針を転換し、各自治体が公開しているごみ出し支援制度の事例を収集し、その内容をデータ化した。また、政令指定都市に関しては、各政令指定都市の事例データに、環境省が実施している「一般廃棄物処理実態調査」からごみの収集量や収集形態、資源化率等のデータを加え、さらに、各都市の高齢化率、調査設置年度の高齢化率等などの情報を収集してデータセットを作成し、分析を行う方針に変更し、分析を行った。 日本における1718全市町のデータも同様に作成中であるが、このデータセットは現在、作成途中である。これが完成すると、マクロデータを用いた分析が可能になる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、次の2つの研究を中心にして進めていく。第1に、現在作成している日本の全市町村のデータセットを完成させ、制度の有無や制度のタイプ、ごみの排出量、高齢化率などの変数を加えてそれぞれの関連を検討する。 第2に、本研究の中心的な調査である日本の全市町村に対する高齢者ごみ出し支援制度に関する調査票調査を実施し、分析を行う。これは各市町村を行為主体としたミクロな視点からの分析となる。両方の分析を通して、高齢者のごみ出し支援制度の課題と今後の可能性を描き出す予定である。この調査の準備は順調に進んでおり、各市町村の送付先なども含めた調査準備は終了している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、本年度に各地の自治体を訪問し、聴き取り調査を行う予定であり、そのための旅費を計上していた。しかし、社会状況からその聴き取り調査の実施が困難であったため、旅費の使用が発生せず、次年度使用学が生じた。
|