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2022 年度 実施状況報告書

海外につながる子どものグローバルリーダーの育成を目的とした海外協働学習の研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K12335
研究機関浜松学院大学

研究代表者

津村 公博  浜松学院大学, 現代コミュニケーション学部, 教授 (30310551)

研究分担者 澤田 敬人  静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (20254261)
白鳥 絢也  常葉大学, 教育学部, 准教授 (40600383)
竹本 石樹  浜松学院大学, 現代コミュニケーション学部, 教授 (90805277)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードICT海外協働学習 / LMS学習管理システム / LCS学習コミュニティシステム / 送り出し地域と受け入れ地域との教育連携 / 海外ルーツの子どものグローバルリーダーの育成 / 母語・母文化の促進 / 大学生による海外メンタリング組織のNPO法人化 / 大学生メンタリング組織とフィリピン教育省との協定
研究実績の概要

本年度は、昨年度の課題であったICT海外協働学習プラットフォームの改善に取り組んだ。具体的には、既存のコミュニケーションツールを複数組み合わせたシステムによる情報の分散化及び管理の属人化を解消し、それに代わるICT海外協働学習プラットフォームの構築とその試行である。さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大により、これまで現地との連携をリモートで実施してきたが、本年度は、浜松市、横浜市、ダバオ市3都市において、児童・生徒の学習環境について、参加観察・ヒアリング調査を実施した。また、ダバオ市では、現地の教員を対象として、ICT海外協働学習システムのデモンストレーションやディスカッションを実施した。
これにより、ダバオ市内の公立小学校と浜松市内の公立小学校2校と海外協働学習を実施できた。佐鳴台小学校では、フィリピンにルーツのある児童を対象としたビジュアルプログラミングソフトによるアート制作、葵が丘小学校とは、DAW(Digital Audio Workstation)による楽曲制作を実施した。
しかし、リモートによる協働学習には制約が伴う。まず、特定の時間に2校が同時に参加する必要があるため、授業時間の調整が難しい。また、対面での活発なグループ討論や自由討論に比べ、リモートでは発言や意見の順番が制限され、結果的に学習の非対称性が生じる。
これらを解消するため、学習管理システム(COLP:Cooperative Online Learning Program)を構築した。その結果、2月にフィリピンに再渡航し、横浜みなみインターナショナルスクール、佐鳴台小学校、DCSSの3校による協働学習を試行した。これによりシステムの標準化が促進し、システム環境が整った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年8月フィリピンへの渡航はワクチン接種を入国条件とすることで緩和され、対面授業が可能になった。この機会を捉えて、オンライン学習に加えて対面授業を組み込んだハイブリッド形式による海外協働学習を実現できた。
海外協働学習のカリキュラムは、浜松市・横浜市に在住するフィリピンにルーツがある児童とダバオ市の児童が、協働して学校をテーマとした楽曲制作、学校の周辺に生息する
絶滅危惧種に焦点を当てたアニメーション制作に取り組み、共通する母国の文化的なアイデンティを確認することを目的とした。
これらの成果により、2023年度にはダバオ市、浜松市、横浜市の海外協働学習のハイブリッドシステムが完成する見通しとなった。
ICT海外協働学習のハイブリッド形式は、対面授業とオンライン学習を組み合わせており、対面授業における母語による直接的なコミュニケーションや対話、リアルタイムのフィードバックを通して母文化の中に自己を形成するきっかけとなる。一方、オンライン学習は、COLP/LMS(学習管理プラットフォーム)とCOLP/LCS(学習コミュニティプラットフォーム)を融合した学習形態である。COLP/LMSは、多様な情報や学習資源にアクセスし、児童は自身の都合や環境に合わせて学習を進めることができ、自律性や自己学習能力の向上に寄与する。課題に対するフィードバックも可能であり、学習の進捗を評価することができる。COLP/LMSは教員と児童との学習を介した縦の関係性を促進する一方、COLP/LCSは児童間のコミュニケーションを強化し、学習コミュニティを形成し、相互のつながりを築く横の関係を支援する。
本年度は、ICT海外協働学習プラットフォームは、そのカリキュラム及びシステムともに、一定の成果を上げた。

今後の研究の推進方策

2023年度にはCOLP/LMSに加えて、ダバオ教育局の協力を得てCOLP/LCSを試験的に導入し、ソーシャルネットワーキング機能を活用した児童間や教員間のコミュニケーションを強化できた。参加児童はグループ内のタスクを遂行するためのフォーラムやフィードを通じて、互いの意見を共有し、相互作用を促す学習コミュニティを創造した。
本研究期間を通して、対面及びオンライン学習におけるメンターの役割を大学生が果たしてきた。COLP/LMSを通して、大学生は参加児童のメンターとして、学習目標やニーズを理解し、個別のアドバイスやフィードバックを提供することで、学習の効果を最大化するためのサポートを行ってきた。COLP/LCSでは大学生メンターは学習コミュニティ内で自身の経験や知識を児童と共有し、ロールモデルとして、児童生徒の学習の動機付けを促進する役割を果たしている。大学生メンターは協働学習を促進することで、学習コミュニティの一体感を醸成し、児童の学習意欲を高める努力をしている。
ICT海外協働学習プラットフォームの成果としては、大学生は研究協力者としてCOLPのプログラムの開発・運営に加えて、児童に対するメンターとして積極的・主体的に関わっている。彼らは、令和3年に「NPO法人わたぼうしグランドデザイン」を設立し、本研究チームのパートナとして、海外メンタリングプログラム「Misha Project」を展開している。令和4年2月に、同法人はICT海外協働学習の支援において、フィリピン共和国教育省Reginal11と協定を締結した。さらに、DCSSに教育実習生を送るダバオ市にある大学(The University of Southern Mindanao: USM)の大学生も「Misha Project」への登録も開始している。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの感染拡大により、国内旅費及び外国旅費の予算が執行できなかった。
そのため、本年度は、遅延したダバオ市のフィールド調査・研究の打ち合わせ、成果発表を計画している。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 多文化共生教育に関する一考察-「共生」を願う人びとへ-2023

    • 著者名/発表者名
      白鳥絢也
    • 雑誌名

      常葉大学『教育学部紀要』

      巻: 第43号 ページ: 39-50

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 静岡県における外国籍児童生徒の状況と日本語指導2023

    • 著者名/発表者名
      白鳥絢也
    • 雑誌名

      静岡多文化共生研究

      巻: 第2号 ページ: 54-61

  • [学会発表] Field Study Report on Learning Support for Ethnic Minority Students by High Schools and Universities in Silicon Valley Area2023

    • 著者名/発表者名
      津村公博 田島喜代美
    • 学会等名
      日本比較文化学会中部支部令和4年度例会
  • [学会発表] 多文化共生社会へ:海外につながる子どものグローバルリーダー化について2022

    • 著者名/発表者名
      津村公博
    • 学会等名
      浜松市 令和4年度第30回浜松市民アカデミー
  • [学会発表] 多文化共生ファシリテーターの育成に向けた基礎研究 その3」2022

    • 著者名/発表者名
      良知惠美子, 増井実子, 谷誠司, 白鳥絢也, 江口佳子, 那珂元
    • 学会等名
      日本学習社会学会第19回大会
  • [図書] 移民を背景とする青少年の自己形成 : 当事者の視点、支援者の視点、研究者の視点2023

    • 著者名/発表者名
      研究会チーム「移民を背景とする青少年の人間形成に関する日欧比較研究 : 学校から職業への移行に着目して」
    • 総ページ数
      92
    • 出版者
      中央大学人文科学研究所
  • [図書] オセアニア諸国の高等教育への接続と社会的公正2023

    • 著者名/発表者名
      澤田敬人
    • 総ページ数
      120
    • 出版者
      学事出版
  • [図書] 世界の学校:グローバル化する教育と学校生活のリアル2023

    • 著者名/発表者名
      白鳥絢也
    • 総ページ数
      264
    • 出版者
      学事出版

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公開日: 2023-12-25  

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