研究課題/領域番号 |
20K12509
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
竹内 有子 京都先端科学大学, 人文学部, 講師 (80613984)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | デザインのオリエンタリズム / 装飾文様 / ポリクロミー |
研究実績の概要 |
本年度は、19世紀英国のデザイン改良運動においてオリエンタリズムの普及に影響を与えた、オーウェン・ジョーンズ(Owen Jones, 1809-74/建築家・理論家・デザイナー)に照明を当て、その東洋趣味の発生と展開について調査した。1970年代からジョーンズに係る先行研究では、イスラム芸術―アルハンブラ宮殿-の礼賛がとりわけ注目されてきた。代わって近年、ステファニー・モーザーが考古学的視角から、ジョーンズとシデナムでのエジプト展示について論じた。しかしこの場合、イスラム芸術との関わりが考慮されていない。何れも、ジョーンズがアジア迄をも含むオリエント装飾を評価した文脈での意味性・彼の理論と実践の関係性・デザイン史上の諸背景が詳らかにされていない。 本研究は、ジョーンズの大陸への調査旅行(1830年代)・著述・二つの水晶宮(1851・54年)での展示の実践・デザイン理論の総合的解析を通じて、彼の活動の集大成である書物『装飾の文法The Grammar of Ornament』(1856年)の意義について再検討した。そして、ジョーンズが「最もオリジナル」と考える古代エジプト建築を特に評価していたことを明らかにした。同時に彼は、植物文様の精華を示した点で、アルハンブラのアラベスク文様を称賛している。同書は、古代エジプトの自然の表象に始まり、ジョーンズによる植物構造を解析した図に終わる円環構造を成している。この過程では、植物モティーフの抽象が進化する様相が問題となった。デザイン改良主義者たちが「様式化」と呼ぶ自然モティーフの抽象化においては、西洋の美的価値観から判断が行われたが、そこで範例とされたのは東方のイスラムであった。ジョーンズのオリエンタリズムには、古典主義および歴史様式からの脱却として、非西洋を経由し、近代科学と自然が呼び出された道筋を見ることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ流行により、2年に渡り海外調査ができていないため、当初の計画より大幅に研究とその範囲を変更をしなければならなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も予定していた英国の現地調査による資料閲覧ができなかったため、入手可能な資料(ジョーンズによる『中国装飾の事例:サウス・ケンジントン博物館と他のコレクションからの選定』(1867年)と『サウス・ケンジントン博物館における中国品カタログ』(1872年)等)に絞って、シノワズリのインパクトを検討し直す予定である。今後も、渡航ができない場合を想定し、「造形におけるオリエンタリズムの影響と近代デザインとの関係性に関する調査」の対象を縮小して進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年に渡り、予定していた英国への海外調査ができなかったため
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