本年度はコロナ感染症に伴う緊急事態宣言等による出張や対面での調査などがほとんど実施できなかったことから、次年度からの本格的な調査に先駆け、調査方法や推進計画の確認も目的としたプレ調査を実施した。 初めに文献調査を行い、2008年に東京国立博物館で行われた「大琳派展」、2015年に京都国立博物館で行われた「琳派京を彩る」等の文献に記述されている、俵屋宗達の作品6点、本阿弥光悦の作品4点、尾形光琳の作品7点、酒井抱一の作品6点を抽出し、技法、構成、色彩、その他の観点に分けて図表化して整理した。その結果、「パターンの繰り返し」「題材の引き算」「金銀の使用」の3つの特徴を導出した。 次に、琳派の絵画と立体作品の観察調査を行った。絵画は酒井抱一の八橋図屏風を対象に、画像の観察と、実際に和紙への模写とAdobe Photoshopを利用した模写を行い、「重なりの深度」「背景+モチーフ」「切り取られたディテール」の3つの特徴を抽出した。立体作品は、本阿弥光悦の「船橋蒔絵硯箱」、尾形光琳の「八ッ橋蒔絵螺鈿硯箱」を対象に観察調査を行い、「図の連続」「認知による完成」「素材の使い分け」の3つの特徴を導出した。 これらの特徴を琳派のデザイン要件の可能性が高い特徴と考え、さらに造形手法として「景の設定」「内部造形の繋がり」「前後の奥行き」「抽象化」「面の繋がり」「金銀の色彩」の6つにまとめ、事例となる電気製品のデザインを製作した。本年度はプレ調査の位置づけで研究を進めたため、対象を電気製品の中でも比較的単純な形状である炊飯器とした。 緊急事態宣言後、一部出張が可能となったため、美術館等での現物調査を実施した。 これら一連のプロセスから、次年度以降の本研究推進のための妥当性と修正点が明確となった。
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