日本は依然「ものづくり立国」であり、今後もコンテンツやサービス事業の強化と共に、製造業の持続的な成長・発展が不可欠である。しかし、グローバル化による価格競争の激化や、均質化・画一化による同質競争が常態化するなど、近年、家電製品や自動車などの工業製品での日本の独自性が失われ、国際競争力が低下してきている。そうした中、クールジャパン戦略を始め、日本が活用すべき資源として日本の美意識の重要性が指摘されており、工業製品においても日本の美意識を活用することで「ものづくり立国・日本」の新成長に貢献できると考える。そこで、本研究は、「ものづくり立国・日本」の新成長に向けた価値創造の一助として、日本の代表的な美意識の一つであり、海外でも認知度が高い「琳派」の美意識に着目し、現代の工業製品で「琳派」の美意識を表現するためのデザイン手法を導出することを目的に研究を行なった。 そのために、既往研究にて琳派の作品は工芸と関係が深いと指摘されていることに着目した。はじめに、琳派を代表する56点の作品の227件の作品解説を5つの表現特徴に分類し、それぞれの表現特徴に関する記述をデザイン手法ごとに整理した。次に、それらのデザイン手法と工芸との関係性について考察した。 その結果、〈単純〉のデザイン手法が【面表現を簡略化】、【記号化】、【極端化】、【省略】、〈破調〉のデザイン手法が【構図を創意】、【再構成】、【暗示】、【定番を脱却】、〈相対性〉のデザイン手法が【対比】、【同調】、【絵と文字を融合】、〈加工開発〉のデザイン手法が【異種混合】、【新素材を利用】、【新工法を利用】、〈立体感覚〉のデザイン手法が【表裏を利用】、【構成を利用】、【手順を利用】であることを導出し、現代の工業製品の事例としてスマートフォンのUIの試作により、導出したデザイン手法の有用性が示唆された。
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